労働新聞 2004年9月5日号 通信・投稿

59年目の敗戦の日
政治家の靖国参拝に思う

吉村 安美

 今年も8月15日の「終戦記念日」を迎えた。今年は59回目となるが、戦争を体験した人びとがしだいに少なくなり、「戦争」が風化しようとしている。新聞を見ても、この日の1面を飾ったのはアテネ・オリンピックだった。
 こうした中で、今年もA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社に4閣僚が参拝し、石原都知事は天皇の靖国参拝を要望した。今年の正月に参拝した小泉首相は、この日も「来年も参拝する」と公言した。
 中国や韓国などかつて侵略されたアジアの諸国は、日本のこうした言動に警戒感を示し、とりわけ歴史認識問題での小泉政権の対応を厳しく批判している。サッカーのアジアカップで日本は中国人にブーイングをあびたが、国家間の冷めた関係が国民間の友好に水をさしており、残念だ。
 東京で開かれた全国戦没者追悼式で小泉首相は「不戦の誓いを堅持し…、平和を大切にする国家として、世界からいっそう高い信頼を得られるよう全力を尽くす」と発言した。この言葉にあ然とする思いだ。なぜなら、彼がやっていることは、これと正反対の方向だからだ。日本はイラク戦争に派兵し、憲法9条の廃止を狙う改憲の動きも強めている。1国の総理の言葉の軽さに、再び戦争の道を歩むのではないかという不安がこみあげてくる。
 同じ追悼式で河野衆院議長は「中国をはじめとするアジアの近隣諸国の人びと…敵味方に分かれて戦い、亡くなったすべての犠牲者にこの日をささげたい」と述べ、「新生日本をつくりあげているか、尊い犠牲を無にしていないか、不安が時折よぎる」とあいさつした。河野氏も保守派の政治家ではあるが、小泉首相とは違いがあるように見える。
 来年は敗戦から60周年の年となる。戦争を体験した人びとは「戦争だけは2度とやってはいけない」とだれもが語る。この節目の年に向かって、私もできることをやりたいと思う。


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