労働新聞 2004年8月25日号 通信・投稿

今年も年金が引き下げ!

老後不安につこけむ外資
生活費を切りつめる毎日

元保険会社員 大林 弘治

 茶番劇の後、年金法案は成立した。
 先日、厚生年金の改定通知が来た。俺が受け取っている厚生年金は物価変動により去年よりも少なくなった。俺の吸っているタバコは、20
円値上がりしている。年500箱買ったとして1万円、年金の引き下げが2万円、合計の生活費の切り詰めは3万円だ。物価指数は何を基準としているのか? 値下がりしているのは、確か最低賃金と雇用確保という名目での給与の切り下げ。これは物価に関係ないと思うがいかがだろう。俺が使われている掃除屋でも競争に勝つためには自主的(?)労働強化が進んでいる。 
 今回の選挙で年金問題の話を聞いてみると、バカバカしくて腹が立った。20年ほど前の現役のころの話だが、国民年金プラス上乗せ年金で、確か10万円ほどの年金がもらえる国の制度を扱ったことがある。当時は個人年金が目玉で、国民年金の上乗せ勧誘は、国から生保会社に押つけられた余分な仕事だった。
 バブルの崩壊、利回りの逆ざやによる経営悪化、保険業法の改定による契約年金の引き下げの自由化、外資への身売りと転売、仕上げは米国資本が簡保に参入するための改革要望書が検討の議題になっていると聞く。
 老後の年金とは何か? 保険とは何か? 8万円、5万円で生活できると思っているのか? 生活保護費はどのぐらいなのか知っているのだろうか? 俺の年金は、将来は生活保護費より安くなるかも? 
 税金・健康保険等を差し引かれると、ささやかな自己責任で保険料を支払うより老後は生活保護で暮らすのがお勧めとなる。
 老後の小使いは、民間生保で。年金は売れ筋でないといってたが、女性で月1万2000円の掛け金で35歳から65歳まで30年間個人年金に加入すると、65歳から年50万円の年金が10年間…。しかし、これも保険業法の改正により支払時期の保険会社の業績により年金額が下がることもありうるので、自己責任で処理してください。

■外資保険の甘言には要注意
 
 ついでに、テレビで宣伝している外資系の医療保険○○。約款をよ〜く眺めて検討しましょう。電話してみる。「ありがとうございます。資料の請求ですね、詳しい資料をお送りします」「約款も入っているんですね」「約款はご要望があれば、お送りしております」
 小さな字で素人には分からないあの約款。俺の現役時代に、3回改定された。15、6年前、3回目の改定で携帯電話の説明書みたいになった。
 届いた約款は入社当時と同じ小さな字で、年のせいか虫眼鏡は大ゲサだが簡単には読めなかった。保険の契約は約款を提示することが前提となる。約款を提示せずに契約をする保険会社の存在を知っているのだろうか? 外資系だから日本政府との合意で特別扱い、とは思いたくない。
 あなたがリストラにもあわず無事定年を迎えたとする。健康保険はこれまでの会社の保険を継続して加入している。ストレスはなくなったが持病の糖尿が心配、血圧が高くなった。この保険に加入するとした。「充実プラン」で1日5000円あれば大部屋での入院には間に合うと仮定する。掛け金は61歳で月1万384円。あなたは血圧関係の疾病で入院する。あなたは5千円を45日間、22万5千円もらえる。ただし、あなたは血圧が加入時に正常であったことを証明しなければならない。加入時に血圧が高いことを告知すれば、入院は2年間待つ必要がある。 
 ほこりの積もった「危険選択の知識と実際」という生命保険協会の本を眺めている。これは保険契約の経費削減のため、医者に代わり素人が、保険の統計から割り出して人間の生死を、十年単位で判断する知識でもある。三十五歳までは素人が他人に面談し、告知が正常であれば、事故、自殺以外に死亡、入院の確率を判断できる。あなたが入院して、給付金をもらおうとすれば、60年生きてきた人生の健康診断で医者の注意を受けた病気以外で、今後入院する可能性は驚くほど低い。
 告知義務を承知で加入し、入院を2年延ばしたとする。その間、掛け金を24万円支払う。入院して給付金を22万円もらう。入院中に2カ月、再入院まで6カ月8万円払う。何日入院すれば元が取れるだろうか?
 日本人の老後の不安につけこむ外資保険。よ〜く考えないと、結局食い物にされるのは庶民ということになる。


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