労働新聞 2004年6月25日号 通信・投稿
民族教育への差別は不当
朝鮮学校支援は国の責任
理解し尊重し合う社会へ
教員・原田 勇治
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先日、朝鮮学校の公開授業を参観する機会がありました。
初級部(小学校)1年生から中級部(中学校)3年生までの授業を見て、児童生徒が大変元気で生き生きと学習に取り組んでいるのを感じました。先生方の声にも張りがあり(朝鮮語なので意味は分かりませんでしたが)、自信・意気込みのようなものが伝わってきました。
朝鮮学校では、昨年度から新カリキュラムを実施し、教科書も大幅に改編されたそうです。その特徴は、(1)国語(朝鮮語)、朝鮮歴史・地理、社会、音楽、美術など、民族性を育てる科目を充実、(2)理数、情報教育を強化、(3)国際社会に能動的に対処できるよう、日本と世界に関する知識を幅広く取り上げた、ということです。
授業の後には児童生徒たちによる芸術公演があり、歌やスピーチ、また朝鮮の伝統的な舞踊など、どれもすばらしいものでした。
私も公立学校の教員をしていますので、こうした立派な教育を維持することがどれだけ大変なことか、よく分かります。
朝鮮学校は、日本の学校と同じ年齢の子供たちが通っているのに、学校教育法でいう小学校や中学校などの学校とは認められず、「各種学校」扱いとなっています。そのため補助金・助成金をごくわずかしか受けられない、大学の受験資格が得られないなどの状況がずっと続いています。これは民族教育に対する差別だと思います。
また、日本の学校に通うコリアンもいると思いますが、そこでは「日の丸」「君が代」を強制したり、「愛国心」「日本人としての自覚」を植えつけようとする動きがあります。
そもそも日本で多数のコリアンが生活しているのは、かつての日本の侵略・植民地支配の結果です。その歴史的経緯を考えるならば、コリアンの言葉や文化を尊重し、その教育を手厚く支援することは当然のことであり、日本の責任ではないでしょうか。
一昨年九月の日朝平壌宣言を誠実に履行するならば、こうした問題は速やかに解決されなければなりません。しかし、米国に追随する小泉政権は、拉致問題や核開発問題を利用し、朝鮮敵視政策を続けています。外国為替法の改悪や特定船舶入港禁止法などもその一例です。だから、5月の2度目の訪朝も、参院選目当てのパフォーマンスのように思えてなりません。
これまでの政治や教育の結果でしょうが、残念ながら日本の児童生徒は、コリアンのこと、アジアのことをほとんど知らされていません。例えば、私が「日本にいちばん多く住んでいる外国人は?」と尋ねても正解はまず出てこず、「米国人」などという答えが返ってきたりします。拉致問題という言葉は知っていても、日本がかつて何をしたかは知りません。これらは、日本とアジアとの関係を考えると本当に不幸なことです。
今回の朝鮮学校参観を通じて、在日のコリアンが誇りを持って民族教育を推進し、日本社会や国際社会に貢献できる人材を育てようとしていることが、よく理解できました。
そして、私たち日本人も、マイノリティを無視・差別するのではなく、お互いの文化や歴史を知り、理解し合い尊重し合って生きる社会を目指さなければならないと、改めて強く感じました。そのためにも、授業や組合活動の中でも、できるだけ今回の授業参観で得たことを生かしていきたいと思っています。
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