労働新聞 2004年6月5日号 通信・投稿
「○○市の用水路で、体重30キロのワニガメが見つかり、××署員が捕獲し…」。こんなニュースは最近まるで珍しくない。
ワニガメは北米原産で、最大で体長は約1メートル、体重は180キロにも成長するという大型のカメ。肉食で、カミソリ状の口で噛(か)まれると大人の指などは噛み切られるということで、環境省の「危険動物」に指定されている。
こんな生物がなぜ日本の川などにいるのか。もちろん自然に海を渡って日本に来たわけではない。90年代前半くらいから一部業者が輸入し始め、ペットとして売買されるようになった。ほ乳類と違い、は虫類は一生成長するので、成長にしたがって手に余るようになり、川などに捨てる人も出てきた。その生き残りである。
このように、最近にわかに有名になったワニガメであるが、私はかなり昔から知っていた。動物図鑑などをよく眺めていた小学生のころの私には、日本のカメにはない迫力に魅せられ、同時にそのカメのいるはるかかなたの大陸の自然に憧れたものである。
その当時は、現在よりはるかにペットのバリエーションが少なかった。イヌやネコなども、今よりずっと種類が少なかった。イグアナは動物園でしか、東南アジアのオオクワガタは博物館でしか見ることができなかった。
そんな状況が変わり始めたのは、やはり80年代後半のバブル期からであろうか。全世界(主には発展途上国だろうが)から輸入(密輸?)されたさまざまな動物がペットショップに並び、目新しいもの好きの人に購入されていったのだろう。
金にものを言わせて途上国の貧しい人びとを珍しい(商品価値のある)動物捕獲へと駆り立てるのに、あり余る資金が日本にはあった。
結局突き詰めれば、これらの動物は、グローバル化した世界の、あり余る膨大な資金と絶望的な貧富の格差により、次々に商品にされ、強制的に市場に放り込まれる犠牲者なのだ。
商品である以上、ある時点で供給が需要を上回れば、過剰在庫となり、廃棄される。購入された商品も飽きられれば捨てられる。捨てられてもたくましく生きるワニガメくんはその一例ではあるが、大多数の生物は、無惨に「破棄」される末路をたどっていることだろう。
この悲劇を解決するためには、生物の輸出入から飼育の制限に至る強力な法規制が必要で、結局は資本主義体制の下では無理だ…。実は似たような主張を10年以上前の高校生の時から友人に主張していたが、当時はソ連・東欧の崩壊直後でもあり、また事態も今ほど進んでいなかったため、説得力に乏しかった。
10年以上経過した今、自分の見通しがいいセンを行っていたと喜ぶというより、そのように事態が進んでしまった残念な気持ちが強い。
かつての「憧れ」が、「危険動物」として新聞紙上で大きな口を開けている。ヒマでしょうがない時にでも、その写真に「お前ら人間こそ危険動物だろ!」とふきだしを書き込むかな。
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