労働新聞 2004年4月25日号 青年

イラク人質事件うけて

学生と教員が緊急集会

元レバノン大使・天木直人氏が講演
小泉首相を即時退陣させよう

 京都精華大学で4月23日、天木直人・元レバノン大使を招いて講演会が開催された。天木氏は、レバノン大使の職にあったイラク開戦当時、米国による侵略戦争と政府の米国支持に反対したため、事実上外務省辞職に追い込まれた。
 講演会当日は、イラクで人質となっていた日本人が解放された直後ということで、多数の学生に加え教員や市民を含め、250人以上の参加者で会場は埋め尽くされた。
 はじめに、天木氏は今回の人質事件について、「自己責任ということが言われているが、解放された3人も自らの意志でイラクへ行ったわけで、確かに自らの責任で行った。しかし、首相である小泉が彼らを批判するのはまったく別問題である。イラクの武装グループはいち早く小泉の対米追従を非難した。解放に努力した宗教者らも今回の解放は日本国民への好意であって、政府への好意ではないし、次回は保証できないとまで言っている」と指摘した。
 「最も許せないことは、小泉首相は国家権力の最高の位置にいる人物であるが、3人は普通の若者。その弱い立場の3人を力を持った人間が率先して『自己責任』という言葉で批判する。これは許し難い暴力である。今回の事件で自衛隊がイラクでどう見られているかがはっきりした。占領軍でしかない米国に追随する日本は敵と見なされている。そうなると、日本国民が自衛隊派遣への疑問を膨らませることになる。それで、政府は被害者の『自己責任』を持ち出し、別の所に問題をすり替えようとしているが、まったく間違いだ」とした。
 また、長年外務省にいた立場から小泉政権について、「小泉首相を見ていると、日本の良さがどんどん失われていることを感じる。米国の意見しか聞かず、他人の意見、国民の意見を聞かない。金や権力ほしさで物事を行っている。日本を劣化させた人物」と痛烈に批判した。
 米国のイラク戦争については、「レバノン含め中東の人びとは米国の戦争目的を知っていた。大量破壊兵器は口実で、石油とフセイン政権の打倒が目的だった。日本と中東諸国の関係は、米国とは違う関わり方であったが、イラク戦争支持でアラブの人びとの日本を見る目は変わってしまった。少なくとも公平中立の立場を取るべきで、米国の戦争に対しては、アラブ諸国はじめ他国の意見や情報を収集し国益に沿って独自の判断をすべきだった。しかし、朝鮮問題がクローズアップされた時期で『米国を怒らせては守ってもらえない』という議論ばかりで、まったく間違った判断であった」と述べた。
 最後に自衛隊派遣について「初めに派遣ありきで、派遣は必要も正当性もまったくなかった。攻撃から一年が経って今米国の占領軍とイラクの国民が戦っている。日本はこの事実を認識して米国に対してモノをいうべき。私は『自衛隊撤退』と共に『小泉首相の即時退陣』を緊急提言として発表した。戦後60年近く経った今こそ、日本のあり方が問われている」と述べ、日本の新たな道を訴えた。

学生・青年は派兵反対の先頭に立とう

 その後、質疑応答の時間がもたれ、学生から活発な質問が出された。その一つに、「イラク戦争と自衛隊派兵に反対する天木さんにはまったく共感できるが、その実現のためにどうしていったらよいか?」との質問に対し、「例えばスペインでは選挙で国民がイラク派兵をしたアスナール政権を倒した。また、イタリアや英国なども国民の強い反発を受け随分苦しい政権運営を強いられている。日本でも米国から離れて独自の道を進むための国民の支持が唯一の方法である。日本国民が行動して政府に圧力を掛けていくことで、米国が日本国民を無視できない状況をつくっていく必要がある」と答えた。
 講演会終了後、「なんで3人は責められなあかんの?! なんで日本は3人を拘束するの?! 」をテーマに約20人の学生が座談会を開催し、活発な議論が行われた。
 主催した学生の一人は、「イラク戦争の経過をたどりながら中東情勢について話があり、分かりやすかった。天木さんは戦争の背景として米国主導のグローバル資本主義を批判していた。今、カール・マルクスのような人が出てきてそれが多くの人の支持を受ければ世の中変わるんじゃないか、と言っていたのが印象に残った」と話していた。
 また、今後について「今回の企画にとどまらず、継続して自衛隊撤退へ向けて皆といっしょに活動していきたい!」と話していた。
 イラク派兵という重大な国の進路をめぐる問題で、学生たちがこのような企画を開催したことには大きな意味がある。学生・青年は派兵反対の先頭に立つことが求められている。


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