労働新聞 2004年4月15日号 通信・投稿

親会社の強引な単価切り下げ
忙しい上に基本給カット

必死で働いても楽にならない
イラク「復興」より日本復興を

町工場労働者 篠原 彰男

 トヨタは史上最高の利益を上げ続けています。日産もかつてない利益を上げているとテレビや新聞に出ています。私は、こういう記事を目にする度に、「当然だよなあー、これだけ下請け・関連を絞れば」と頭に来ています。
 私は、プラスチック金型をつくる町工場で働いています。うちのような何次下請か分からないほどの末端になると、自分がつくっているものがなんの部品なのかも分からないほどです。自動車関連が多いので仕事はあるのですが、コストダウンが当たり前になっており、仕事の注文を受けても、これまでの見積もりの6割くらいの単価にしかなりません。
 親会社は「いやならよそに頼む。いざとなれば中国もある」と強気です。もっともその親会社も、その上からは同じようなことを言われているのですが。結局、苦しくなれば、大企業は関連・下請けにしわ寄せを行い、自分のもうけは守っているのです。
 しかし、もうけが少ないといっても仕事は断れません。断れば、次から仕事が来ないということは当たり前ですから。たとえもうけがなくとも仕事をしてカネを回さないと、工場の家賃、機械のリース代金や電気代、俺たちの給料が払えず、倒産します。まさに自転車操業です。だから、やってもやっても利益が上がりませんが、毎日残業、休日出勤が当たり前になっています。
 私ももう若くはないので、体がもつかどうかが心配です。家内も「大丈夫? 顔色が悪いわよ」と心配はしてくれますが、まだ子供が学生なので、働かなくてはなりません。
 うちの会社の社長も困っており、いくら仕事をとってきても追いつきません。私も基本給がカットされました。それも2回も。社長の給料は私より少ないので可哀想ですが、そんなことは言っておれません。
 社長とも相談し、自動車関連の仕事は、なるべく減らし、他の分野の仕事を増やすようにしています。もちろん、いやな仕事でも断れば、まったく仕事がなくなる可能性もあるので、できるだけ受けるようにはしています。そのために残業が続くのですが。
 そんな中で、最近は違う業種の仕事が少しずつですが、増えています。それはパチンコ関連です。もちろんパチンコ台をつくるのではなく、どこかの部品の金型でしょうが。パチンコも相当に部品が多いので、仕事量もあるようです。いちばんうれしいのは、自動車と比べれば、コストダウン要求が軽く、ややもうかるようです。

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 それにしても世の中、おかしい。不況で倒産や失業者は減らない。仕事があっても、働いても働いても楽にならない。その一方で、史上最高の利益を上げる大企業があります。ウワサでは、トヨタのある一次下請けでは(トヨタの下請けとはいっても大企業ですが)、3年連続のコストダウン10%のために赤字になり、課長以上はボーナスが半分にされたといいます。
 こんなに労働者が苦しいのに、小泉首相は何を考えているのでしょうか。大銀行には税金をつぎ込み、戦争状態のイラクに自衛隊まで派兵しています。米国のお先棒を担ぐイラク「復興」よりも、日本の国民が苦しいんだから、日本復興に税金をつぎ込むべきです。世の中、本当におかしいと思うのは私だけでしょうか。


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