労働新聞 2004年3月15日号 通信・投稿

訓練校で連帯感生まれる
イラク派兵より失業対策だ

失業者 山城 憲男

 今、私は無職(失業し求職中)で、中高年齢者を対象にした職業訓練校に通っている。通っているといっても、これから先に展望があってのことではない。とにかく生活をしなければならないので、失業保険で食いつないでいるというのが本音だ。できれば訓練での経験を生かせる職業につければいいのだが、いまの時勢はそんなに甘くはないみたいだ。  毎朝、訓練校では……。
 「仕事は見つかったかね」「いや、なかなかだねー」という会話。
 別なところでは、「条件は悪いが面接が一件入ったよ」と、少し顔をにんまりする人の声。
 毎朝、「おはよう」の代わりに、こんな会話が周辺で飛び交っている。
 職業訓練校の就職相談員とも話したが、いま受けている訓練での職種は「ハッキリ言って皆無だ」という返事だった。こんな話を聞けば、だれもが訓練に力など入るはずがないし、まして、指導員にも覇気が感じられない。
 とにかく、学んでいるみんなは「仕事に就きたい」というのが切実な要求である。みんな社会的経験の豊かな仲間ばかりで、総勢40人。過去の職種を聞いてみたら、建設業関連の職場で働いていた人が半数近く、鉄鋼や電機関係など製造業関連で働いていた人も多い。電機会社で働いていた人は希望退職に応じたそうだ。また定年でこれから第2の人生を考えて訓練を受けている人が数人、その他、JRの下請け、農協、サービス産業関連の人、葬儀社とかゴルフのキャデイー、マグロ漁船に勤務していた人など職種はさまざまだが、倒産や首切り、リストラなどで職場を奪われた人が大半である。まさに社会の縮図と言っても過言ではないと思う。
 私の住む地域は全国的に比較してみても大変経済状況が厳しいところである。この地域の失業率は全国平均の2倍、一二〜一三%といわれている。有効求人倍率も〇・二で、若年層はもちろん、私みたいに中高年層になると大変厳しい。月10万円少しの給料でどうして生活ができようか。
 訓練校でこんな会話があった。「自衛隊を海外に派遣するカネを国内の雇用拡大に使え!」とだれかが言った。みんな「そうだ!そうだ」とうなずいていた。よく政治の話も出るが、小泉(首相)を批判する人はいても、ほめる人はだれ1人もいない。選挙では自民党に入れた人でもである。
 ある年配の人が言ったことがいまでも印象に残っている。「選挙で投票しようにも、働く者の政党がなくなったなー」と。
 この前、保育園の「発表会とお別れ会」があった。私の娘も今年4月から小学校に通う。最初で最後の保育園での「発表会」で、園児みんな一生懸命お遊戯をしていたが、その中に娘もいた。娘の姿に一息つく時間をもらった。
 明日もまた、「仕事は見つかったねー」という会話で1日が始まるが、いままでに数人の仲間は仕事が見つかり、ポツポツと学校を去って行った。
 退校のあいさつに立った仲間に、みんな大きな拍手と、「おめでとう」という声をかける。同じ境遇に立った者は本当に短期間でも連帯感が生まれている。このことは本当に大事だと思う。だって労働者同士だからだ。明日からまた力を振り絞ってがんばらねばと思う、今日このごろだ。


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