労働新聞 2004年2月25日号

米国産牛肉輸入禁止は当然
おかしいんじゃないの、吉野屋

香山 里美

 米国の牛から昨年12月、BSE(牛海綿状脳症)感染が見つかった。米国ではへたり牛(歩行困難な病気の牛)だけを検査しているらしいが、12月に見つかった牛はへたり牛ではなかったとの証言も出ている。
 つまり、偶然に検査を受けたものがBSEだったということは、もっとたくさんのBSE牛がいる可能性があるということだ。米国農務省の調査団の報告でも、北米全体が汚染されおり、米国のBSE対策は不十分だとの衝撃的な報告が公表されている。
 日本の牛からBSEが見つかった時のことを思い出す。あの時、テレビや新聞は、米国産牛肉はBSEは発生していないから「安全」だとさかんに宣伝した。米産牛を買い求めた消費者も多いと思う。
 要するに、米国では検査体制がいいかげんだったのである。エッ、私たちはだまされていたの、というのが正直な気持ちだ。
 こういう事態になっても米国は、感染の心配はないから全頭検査もしないと豪語している。おかしいんじゃないの。輸入禁止は当然の措置だ。
 おかしいことはまだある。最近の吉野家をめぐるマスコミの騒ぎだ。吉野家の牛丼がなくなることを、国民生活にとって大打撃でもあるかのように騒ぐマスコミ。これまで米産牛が安全だと無責任に報道してきたことの責任は、どうとるつもりかと問いたい。
 それから、あくまで米産牛肉にこだわる吉野家も、何かおかしい。まずは、これまで消費者に提供してきた牛肉が本当に安全なものであったのかを明らかにすべきだ。それが企業責任というものではないのか。それなのに、吉野家は開き直るように、販売を中止しただけだ。米産牛が手に入らないのなら国産牛を使えばいいじゃないの。そうすれば、牛丼ファンも満足し、国内の畜産農家も潤って一石二鳥だ。
 そんな時、某新聞を開いて驚いた。「がんばれ吉野家応援団」なるものが、全面広告で牛丼の復活、早期の輸入再開を訴えていた。ここまでくると吉野家の後ろに、米国のカゲが見えてくるというものだ。


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