労働新聞 2004年2月25日号
数カ月で大変身した組合
権利を守ると執行部が宣言
ビラ配りに胸を張る仲間たち
工場労働者 岡谷 健介
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●委員長になって大問題に直面
私は従業員が100人ほどいる工場で働いています。いちおう労働組合もあります。以前はけっこう闘う組合でしたが、ここしばらくは組合役員のなり手がない状況となっていました。
昨年の役員改選の時、とうとう「もうクジ引きで決めるしかない!」というところまで煮詰まっちゃいました。これまで組合活動から距離をおいてきた私ですが、さすがに「そこまでやってしまうの? いくらなんでもナアー」ということで、委員長を引き受けることになってしまいました。
委員長になって、職場の状況を見てみると「大変なことが起こっている」ことに気づきました。実はわが社の関連会社に出向している仲間たちがいるのですが、その仲間たちから「会社との約束の出向期間が終わろうとしているが、会社側から何も言ってこない。返してもらえないんじゃないか。何とかしてほしい」と訴えられたのです。
事情を聞いてみると、出向期間については会社との口約束だけだったことや、管理職はすでにその関連会社に転籍させられていることなどが明らかになりました。毎日職場で働いていますから、出向している仲間がいることは知っていましたが、まさかこんな状態に置かれていたとは知りませんでした。
さっそく会社側に説明を求めたら、何と「出向期間が終わったら、転籍か辞めるかの選択をしてもらう」ということでした。要するに返してくれるんじゃなくて、転籍がいやなら辞めろということでした。
大変な時に委員長を引き受けてしまったと後悔しましたが、もう後の祭り。こうなったからには仲間たちとがんばる以外ないと腹をくくったものの、本当に仲間を守りきれるのか不安で不安で、夜も眠れなくなってしまいました。賃上げなどはみんなの問題だからいいのですが、出向に行っているのは何人かの問題なので、組合全体で闘えるのか? 何といったって委員長をクジ引きで決めようとした組合だぞ! そんなことが頭の中でグルグルと回り始め、一睡もできず。
●緊張感に満ちた初めての団体交渉
次の日ともかく執行委員会を開いて議論することにしました。「こんな重要な問題、組合としてほっとけない」と自分の意見を提案したら、すごくよい意見がいっぱい出されました。「まずは出向に行っている仲間一人ひとりの気持ちを聞こう。その上で、彼らが闘う決意を示したら組合として全面的に支えよう」「この問題でさっそく職場集会をもとう」「全員集会も開こう」ということになりました。
職場集会そして全員集会を何度も開き、会社との団体交渉に入りました。今年の執行委員は多くが役員経験がない仲間でした。団体交渉では全員必ず発言しようということにしましたので、みんな交渉日の前夜に自分の発言の練習をして備えたそうです。
会社側の回答次第では「今までの労使関係を根本的に見直す」との申し入れを行って臨んだ団体交渉は、緊張感あふれるものでした。
●労働者には力があるんだと実感
数日後、会社側から「出向者の意向を尊重する」との回答が来て、ヘナヘナになるほどホッとしました。ただ、どうもこれで一件落着とはいかないようです。関連会社との統合問題など出てきていますので、今回が第一ラウンドということになりそうです。
この闘いを通じて感じさせられたことはたくさんあります。
大事だったのは、執行委員会が労働者の立場に立って、労働者の権利を守る! と職場の仲間に表明したことだったと思います。そんなもの当たり前のことなんだけど、でもこれがいちばん大事なことだったと思います。ここから仲間の結集が目に見えて強まったのです。
委員長をクジ引きで決めようとしていた組合が、ほんの何カ月で信じられないほど変わっちゃいました。全員集会でみんなに切々と訴え、決意を語る出向している仲間。団体交渉でふだん話したこともない社長に、練習してきた自分の言葉で迫る仲間。久々の腕章を巻いての門前でのビラ配りに胸を張る仲間。
大変な時に委員長を引き受けてしまったと悔やんだ自分でしたが、労働者には力があるんだなあと改めて感じさせられました。
世の中はリストラは当たり前みたいな風潮ですが、こんなもの絶対許しちゃダメだと思う。
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