労働新聞 2003年12月15日号 通信・投稿

自衛隊イラク派兵に思う
轍(てつ)を踏むことなかれ

大阪・商店主 江副 良治

 国策だからと、国民の70%が反対するイラクへの出兵を、政府は可決した。
 思い起こせば、昭和の初期、国策で「八紘一宇」(はっこういちう)や「五族協和」の大義名分に乗せられ、心から大陸の発展を願い、骨を埋める覚悟で渡満した。終戦で身をもって経験したことは、1部の利権を共有する現地の人びとを除き、中国人がいっせいに蜂起し、日本人に多数の犠牲者を出す結果となったことである。
 ふだんは平穏なように見えていても、他国の軍人、軍属が自国に踏み込むとなると、心穏やかでないものがある。
 12月1日の朝日新聞に、親日派のイラク人の発言で、「私は日本が好きだが、自衛隊がイラクへ行くようになったら、日本がキライになる」という声があった。日本にも米国の駐留を快く思わぬ人も多い。
 それに、今回のイラク紛争は宗教戦争の感があり、暴発の危険が大である。
 これ以上の犠牲者を出さぬためにも、イラクへの自衛隊の派遣には絶対反対である。

イラク派兵に思う
小泉首相は国民の疑問に答えよ

三浦 南恵

 小泉首相は12月9日、自衛隊をイラクへ派兵する基本計画決定について記者会見した。会見はテレビでも放送され、国民に向けてイラク派兵を声高に宣言する場となった。小泉首相は、言葉巧みに「国民の理解」を求めた。しかし、そこには、武装した自衛隊をイラクに派兵することについて、国民の疑問に対する答えは何1つない。対米追随だけが日本の唯一の選択であるという、「言い訳」が並んだだけである。
 なぜ、イラクに自衛隊が行かなくてはならないのだろうか。日本国民を守ることが自衛隊の任務だとしたら、イラクには守るべき日本国民はいない。それは国民がもつ当然の疑問だ。
 しかも、小泉首相はイラクが「必ずしも安全とはいえない」と明言し、重装備し攻撃できる兵器を持っていくことを正当化した。イラク「復興」支援法では「非戦闘地域」への派遣となっていたはずだ。
 ペテンにペテンを重ねて、国民の思考回路を切断しようという作戦か。これまでとは質が違う戦闘能力を備えた軍隊の初めての海外派遣は、日本の戦後史を画する重大な事件である。
 小泉首相は「イラク人が希望している」とも語った。しかし、テレビによく映されるサマワに掲げられた「自衛隊歓迎」の横断幕は日本人が下書きしたものだったということが暴露された。すべてが仕組まれている。
 その上、小泉首相は「日本国民の精神が試されている」と国民に向かって言い放った。この思い上がった言動にはあきれかえる。侵略戦争の過ちを2度と繰り返さないことが、この国の為政者に課せられた最大の使命ではないか。こんな政府に振り回されて、自衛隊員はイラクに派遣されようとしている。
 小泉首相の対米追随しか選択肢にない硬直した考えこそ、日本を破滅に導く危険な道だ。


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