労働新聞 2003年11月5日号 通信・投稿

構造的欠陥もつRDF発電所
他人事でない爆発事故

福岡県大牟田市 織田 拓野

 消防士2人が死亡した三重県のRDF(ゴミ固形燃料)貯蔵サイロの爆発事故を、大牟田市民は大きな衝撃をもって受け止めました。大牟田のRDF発電所も、三重のそれとほぼ同じ昨年12月に本格操業を開始しただけでなく、人身事故には至ってはいませんが、この発電の根幹にかかわる、いわば構造的欠陥ともいえる事故を繰り返していたからです。

■炭鉱に代わるバラ色の産業?

 大牟田市は、1997年3月に三井三池炭鉱が閉山し、基幹産業である石炭が消滅する事態への対応として、それに代わる産業、「環境リサイクル産業」を誘致するという方針を設定しました。その中心的・先駆的な役割を担ったのが、このRDF発電所でした。これは、それぞれの自治体が収集したゴミを、粉砕・乾燥・固化してRDFを形成し、それを大牟田に運んで燃焼し、発電するという計画でした。「ゴミから電力を生み出し」「ダイオキシン対策の切り札となる」夢の技術だと宣伝されました。しかし、当時発表されたバラ色に輝く基本計画を聞いても、私たちの中には疑問が広がるばかりでした。
 この話を最初に聞いた時、私は、過疎の村が放射性廃棄物の処理工場や産業廃棄物最終処分場を誘致するのと同じ構造ではないかと感じました。今振り返ってみると、この直感はそれほど的はずれではなかったようです。
 まずゴミがエネルギーを生み出し、二酸化炭素の削減効果もあるという点ですが、実はゴミを乾燥してRDFを製造する時に大量の灯油を燃やします。また遠方からトラックで大牟田まで運ぶわけですから、エネルギー削減効果はほとんどありません。そして何より、自分たちの出したゴミは自分たちで責任をもつという「自区内処理」の原則を壊すことになります。そもそもこれからの社会は、ゴミをどのようにして減らすかということがいちばんの課題であるはずで、ゴミを燃やすことを産業として成り立たせようとする発想自体が、間違っているといわざるを得ないのです。
 また、電力売買の規制緩和が進む中で、今後15年にわたって安定的に売電収入を確保できるのか。焼却灰を資源化し、これを産業化するということが本当に実現可能なのか。さまざまな疑問が、計画に反対する住民運動の側から出されましたが、結局、明確な回答のないまま計画は強行され、昨年の10月試運転開始、12月から本格操業が開始されました。
 さらに、この環境リサイクル産業が展開される用地についても、不透明さがつきまといました。ここは公有水面だった海岸を、三井鉱山がボタ(石炭などを取ったあとの石)の捨て場として許可を受け、できあがった土地は三井の私有地となって工場廃棄物などが埋め立てられ、さらに76年からは工場排水で汚れきった大牟田川の浚渫(しゅんせつ)ヘドロが埋め立てられた問題の土地でした。当初、市はこの土地を無料でもらい受けるといっていましたが、三井がそんな話に乗るわけもなく、土地の価格をめぐって交渉が難航していました。そして市が考え出したのが、土地区画整理事業で工業団地を造成するという苦肉の策でした。
 こうしてだれ1人住んでいない荒廃地で、区画整理事業が展開されたわけです。この土地にはさまざまな有害物質が埋め立てられています。造成工事前に区域内の水たまりのpHを測定したら、なんと強酸性の2〜3でした。今でも雨の時に土地からしみ出す水は、赤褐色をしています。

■すでに事故が5回も発生

 さて、昨年12月に操業を開始して以来、この発電所は5回の事故を繰り返し、4回操業停止に追い込まれています。詳しく述べる余裕はありませんが、それらの事故のうち少なくとも4回は、川崎重工社製のRDF焼却炉の特徴が事故原因となっており、三重と同じ貯蔵サイロでのRDFの火災ですから、この発電方式がもつ構造的な欠陥といえます。こんなたとえをした人がいます。「マラソンにたとえたら、スタートして競技場の中で3回転び、マラソンゲートでまた転び、ロードに出たら今度は靴が脱げちゃった」と。
 ここまで書いたら、こんなニュースが飛び込んできました。発電所はRDFを燃やす手数料として一トン当たり5000円の「処理委託費」を取るという契約を福岡・熊本両県の28自治体と交わしていますが、これを7200円に値上げする方針を出しました。住民運動が指摘した通りの事態が進行しています。
 RDF発電に反対する住民運動は、現地では圧倒的少数派であることを余儀なくされてきましたが、それぞれのグループが連携を取り、またそれぞれが独自の課題を追求しながら、しぶとく活動しています。


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