労働新聞 2003年10月15日号 通信・投稿

職場に怒り渦巻く

自動車工場からの報告
許せない、年齢給の廃止
労働者間の格差広げる策動

自動車工場労働者 青山 元

 会社は史上最高の経常利益を更新しながら、この期間も「不況」を口実に労働者への攻撃を緩めていない。生産台数は工場の能力限界に達しながらも、人減らしは至上命令として進み、労働者は連日の長時間残業に心身ともクタクタだ。
 「家に帰ったら飲んで寝るだけで疲れなんか取れっこない」のが今の労働者の実態だ。自殺者が続発するのも当然で、新日鉄やブリヂストンでの事故も、俺たちと同じように追い込まれた末に起きた事故で、決して他人事ではない。そして、その責任はすべて会社にある。
 しかし、会社の攻撃はやまない。これまでも職能給の導入、通勤手当の見直し(カット)、寮・社宅の家賃見直し(値上げ)、福利厚生費の個人別限度額の設定など、立て続けに直接賃金にかかわる制度改悪を進めてきた。そして、ついに会社は「職能給」の仕上げともいうべき年齢給の完全廃止と、退職金制度の見直しを提案してきた。
 会社と組合幹部はすでに5月から「処遇制度の見直し」と称して会合を持ち、2年前から事務技術職労働者には導入されている年齢給廃止を、工場労働者にも導入して賃金の「職能給」全面1本化をもくろんできた。彼らの言い分は「年齢給は生計費であり、時代に合わない」「がんばれば報われる賃金制度でない」と称し、現状の賃金制度では中国などとの「国際経済戦争」に勝てないとあおる。
 しかし、彼らの狙いは中国などアジアの台頭と国内の不況を口実にした労働者搾取に過ぎず、労働者同士を争わせ、低賃金でこき使い、その上前をはねてさらにもうけを増そうとすることにほかならない。
 さらに、退職金に対しては「退職時の基本給に係数を乗する」とする現状の制度から、「在籍中の1年ごとに査定をし、そのポイントの累積を退職金に換算する」というものだ。これも労働者を在籍中は新入社員から定年直前まで徹底してこき使い、労働者個人間の格差をさらに広げる悪らつな反労働者的哲学に貫かれているものだ。
 これらの制度改悪はこの会社の労働者の3分の1を占める団塊の世代の賃金と退職金を直撃するもので、会社の狙いの1つはここにある。それゆえ、これを見破っている中高年労働者の不満も強い。
 先日開かれた職場討議では、組合員の「老後の生活設計も立てられない」「組合役員は俺たちの生活の実際が分かっているのか」などの怒りの声に役員も説明に窮するばかり。Aさんから「俺の賃金はいくら減るのか? 具体的な数字を出せ」との質問に対し、役員は「すぐには分かりませんが、かなり減ると思ってください」との回答に、出席者全員が即座に提案拒否を通告した。
 最近の話題はこのことばかりで、労働者の怒りは収まらない。


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