労働新聞 2003年9月15日号 通信・投稿

内部告発
リストラで希望退職を募った丸井
退職者に「自己都合」を強要
こんな不条理は許せない!

 百貨店の丸井(正社員6500人)がリストラ案を発表した。社員のうち700人を削減し、管理職を除く5500人を子会社へ転籍させるという内容だ。労働組合もこのリストラに合意したことが、8月12日に新聞報道されている。最近、丸井の社員から匿名で労働新聞社へ投稿があった。リストラにともなう労働者犠牲の実態を内部告発したもので、労働者の激しい憤りが伝わってくる。


 「希望退職」を発表した丸井の労組支部役員の1人です。お世話になった先輩への餞(はなむけ)と会社の民主化を願い、良心に従いペンをとりました。
 従業員全員の子会社への転籍をはじめとした一連のリストラに飽きたらず、経営責任を回避するため退職社員を路頭に迷わす、丸井およびその御用組合の不実不正ならびに官民ゆ着の実態を内部告発いたします。
 ご案内の通り、失業給付(手当)は離職理由によって、給付開始時期、期間などが異なります(「自己都合」の場合は、離職者には不利な給付となります)。
 今回の一連のリストラに伴い、退職を選択せざるを得なかった社員に対し、丸井ならびに丸井労働組合は、これを希望退職(会社都合)とは認めず、「自己都合」として処理(ハローワークへの届け出)しようとしています。
 また、組合本部役員の発言から判断すると、給付に関する決定権をもつハローワーク(新宿)に働きかけ、すでに担当官からは「自己都合」のお墨付きを受けているようです。
 希望退職(退職金割り増し支給)に応募して辞める700人全員に「自己都合」を強要する前代未聞の暴挙に出る丸井とハローワーク(新宿)には、単なるなれ合いを超えた官民ゆ着、まさか贈収賄はないとは思いますが、危険な関係を想像せざるを得ません。
 お目付役の某労政事務所は、「退職金の割り増し支給が、退職勧奨(会社都合)を裏付けているが、会社や組合からの一方的な偏った情報と、もともと給付を抑えたい立場から、ハローワークが誤った判断を下す可能性は十分ある」としています。
 丸井がなぜ、離職理由を「自己都合」にこだわるかといえば、「経営責任を回避するため」だといわれています。事実、経営陣は、これまでの数々の営業施策の失敗に際しても、今回の一連のリストラ策執行に関しても、1度も経営責任を表明しておりません。
 今回のリストラを、会社は「経営改革」と称し、前向きの施策としておりますが、実態は本業である小売業そのものの長期低迷(消費者金融収益の陰に隠れているが)のツケを「痛み分け」ではなく、一方的に従業員にのみ押し付けているだけなのです。
 「リストラ」「希望退職」を認めることは、失政と経営責任を認めることになるのです。したがって彼らは狡猾(こうかつ)にも「リストラ」「希望退職」とは、口が裂けても言わないのです。
 こんな卑劣な経営陣の保身のために、経済的に困窮する退職者の正当な給付を受ける権利が侵害されるという不条理が許されてよいのでしょうか。
 今回の丸井の「希望退職」と世間で行われている「希望退職」とどこが異なるのでしょうか(先に、知人が西友を希望退職いたしましたが、当然「希望退職」扱いでした)。
 在籍社員の1割強が辞める異常事態を「希望退職」(会社都合)と言わず、「自己都合」だと言い張る丸井のごう慢かつ厚顔無恥な体質を白日の下にさらしてやりたいのです。
 心ならずも千人もの同胞が辞めるのです。彼らの退職後の生活を思いやり、少しでも有利な取り計らいに奔走(ほんそう)するのが労働組合の本分ではないでしょうか。
 一連のリストラ策の片棒を担いでおき、さらに会社のいうことを受け売りし、調べもしないで「これは自己都合退職」だと言い放つ組合本部には、あきれて開いた口がふさがりません。労組とは名ばかり、会社のためのポチ組合なのであります。
 もちろん、近い将来復籍し、経営陣への登用が約束されている組合本部役員に期待するのは、もともと無理な話ですが(現在、会社を牛耳る最高権力者も組合出身)。
 一連のリストラ策に関して、会社のスポークスマンに終始した組合に対して、「組合は要らない。解散しろ」「高い組合費など払いたくない」「最近竣工の豪華組合本部建物を売却して組合費を返せ」などの罵声(ばせい)を浴びせられたのは、われわれ支部役員なのです。
 今回の一連のリストラ策を株式市場などではおおむね好意的に受け止めているようですが、果たしてどうでしょうか。「企業は人なり」といいます。一連の騒動で、「社員を大切にしない会社」というのが、社員の肝に深く銘じられたはずです。


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