労働新聞 2003年8月5日号 通信・投稿

土用の丑の日

愛知・榊原 康司

 土用の丑の日に皆さんはウナギを食べましたか? そうはいっても今年の丑の日は7月27日ですが、梅雨も明けておらず、ウナギを食べたいという気分にはならなかった人も多いと思います。私も食べる気がせずに終わりました。
 土用とは立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間のこと。そして夏の土用の丑の日が有名になり、残っています。土用の丑の日にウナギを食べるようになったのは、江戸時代。商売がうまく行ってないウナギ屋が困っていると、平賀源内が土用の丑の日にはウナギを食べることを提唱したのが始まりといわれています。もちろん、そのウナギ屋は繁盛したそうです。
 ちなみに朝鮮は夏バテ防止にウナギではなく、犬を食べるのです。ソウルオリンピックの時に、韓国政府は「犬屋」を外国人、とりわけ欧米人の目から隠すために大騒ぎしたことを、覚えている人もいるかと思います。
 さて、ウナギですが、胸の所が黄色いので「胸黄(ムナギ)」がウナギになったという説もありますが…。
 ちなみにウナギの生産は愛知県が全国1位でしたが、最近、鹿児島に抜かれました。また、ウナギの焼き方には江戸前と関西風があります。ご存じのように背開きと腹開きの違いと蒸す手間の違いです。愛知県豊橋市には江戸前と関西風の店が入り交じっています。だから、このあたりが日本の関東と関西の文化圏の境かもしれません。
 さて、スーパーに行くと安いウナギがたくさん並んでいます。そしてやたらと長いのが目立ちませんか? あれはフランス産の「アンギラ・アンギラ」という種類で、日本のウナギ「アンギラ・ジャポニカ」とは種が違います。
 こうした中で、日本のウナギ業者は大変厳しい状況にあります。ウナギの消費量は増えているのですが、値段は安くなる一方です。日本のウナギの消費量の8割は輸入品です。しかも中国や台湾から安い値段で入ってきますので、とても日本の養殖業者は太刀打ちできません。かつて3000ほどあった養殖業者も今は400ほどに激減しています。
 日本の製造業が中国の製品に押されているのと同じ状況です。価格競争では、とても人件費や地代が安い中国や台湾には対抗できません。多くの皆さんも安い方が助かるでしょうが、日本の文化であるウナギが失われてしまうのは恐ろしいと思いませんか。
 値段が安いということは、それをつくる労働者の賃金も下げられ、生活破壊されるということです。『価格革命』という宣伝にだまされてはいけません。「100円ショップに行くと感動するが、こんなものまで100円で売られてよいのか!」と言っている経済学者がいますが、本当に値段と賃金のことを考えていかなければと思うこのごろです。


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