労働新聞 2003年8月5日号 通信・投稿

断末魔の叫び上げる社会
資本主義は永久には続かない

教員 久保田 昇二

 19世紀に封建社会を倒し誕生した資本主義社会が、21世紀に入り、ついに断末魔の様相を呈してきた。貴族社会が封建社会にとって代わられたように、今、資本主義が社会主義社会(「社会主義? そんなものとっくにつぶれたじゃないか」という人は最後まで読んでね)にとって代わる条件が熟している。
 いったい、この社会制度の変化は何が原因で起こってきたのでしょうか。なぜ貴族社会はずっと貴族社会でありえなかったのか。封建社会はなぜいつまでも封建社会でありえなかったのか。それが理解できなければ、資本主義社会は永久に続くとしか考えられません。
 社会制度は人間の話し合いによって改められたのでしょうか。いっただれが社会制度を変えたのでしょうか。そもそも、封建社会や資本主義社会をつくったのはだれなんでしょうか。これはたいへん興味深い問題です。私たちはこれについて大いに議論する必要があります。壮大な歴史をつくりあげてきたこの社会制度について、私たちはもう一度謙虚におさらいすることが大切だと思います。
 もし現在の資本主義体制が永久に続くとしたら、私たち労働者には夢も希望もありません。あなたは資本主義が今後もずっと続くと思いますか。このことを見極めるには、人間社会が変化してきた様相をいま一度見直すことがカギとなります。つまり、なぜ1つの社会制度がそのまま続かないのかということです。
 貴族社会は、貴族が奴隷(主に農奴)を支配して成立してきた社会体制です。封建社会は、武士が農民を支配して成立してきた社会体制です。そして、資本主義社会は、いうまでもなく資本家が労働者を支配している社会体制です。ここで、この関係を注意して見ると、封建社会の支配者である武士は、貴族社会の下層から発生していることです。貴族がそのまま武士になったのではけっしてありません。歴史の先生に聞いてみてください。そして封建社会で農民であった者から次の資本主義が発生してきているのです。農民階級から商人が発生してきているということです。武士が資本家になったのではありません。
 つまり、「武士の誕生」と「資本家の誕生」をしっかり理解することです。簡単にいうと、どういう人たちが武士になり、どういう人たちが資本家(最初は商人)になったのかです。
 重要なことは、いずれの社会体制もその末期において、その社会体制が時代の発展についていけなくなった、言い換えれば、その社会体制ではどんなことをしてももはや問題を解決することが不可能になって、社会体制が変わらなければどうにもならない状態がつぎつぎと発生して止まらなくなってしまったのです。
 人びとは、旧体制とそれを支える支配者に完全に愛想をつかし、心の底から不信感を抱き、その不信感は絶望と怒りに変わっていきました。封建社会を支える江戸幕府が倒れるころ、商人や農民である一般庶民のあいだにご承知の「ええじゃないか運動」が自然発生的に起こりました。人びとは表に飛び出し、裸で「ええじゃないか、ええじゃないか」と夜中まで踊り狂いました。お上は賄賂(わいろ)漬け、したい放題で「百姓とゴマの油は搾れるだけ搾れ」のたとえ通り、年貢をぶっかけてくる。幕府の金庫に群がって食い荒らした武士は、その穴埋めに百姓に膨大な年貢を押しつけたのです。
 江戸幕府は、ペリー率いる黒船が浦賀にやってこなくても完全に民衆から愛想をつかされていたのです。これが江戸末期、つまり封建社会の最後の社会状況だったんですね。でもこれ、今の状況と似ていませんか。
 政治家は賄賂でつぎつぎと捕まる。親は子、子は親を殺す。学校の先生は生徒にエッチする。家庭は不倫でいっぱい。道を歩けば引ったくりに会い、殴られ、切られ、あげくのはては殺される。倫理なんてものは死語となり、綾小路きみまろの話じゃないが、「警察でまじめなのは警察犬だけ」という冗談も冗談ではないのです。
 資本家と資本家がつぶしっこの競争。資本家の数はますます少なくなり、富はその少ない資本家に集中し、巨大資本がますます鮮明となる。
 そして世は乱れ、その度合いをますます増している。この狂った社会状況こそ、一つの体制の終えんの兆しでなくて何でありましょうか。これが時代の変化の様相です。こうして一つの体制は新しい体制へと転換して歴史は前進するのです。
 競争の行き着くところは、しょせん殺し合いです。競争に勝つためには人1倍がんばらなくてはなりません。どうぞがんばってください。突然死だの、過労死だの、脳卒中だのと気にしていたら勝てません。
 「働けど働けどわが暮らし楽にならざり じっと手を見る」を同感と見る仲間の皆さん、与えられた以外の道を探ってみませんか。希望の見える道がきっとあります。


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