労働新聞 2003年7月5日号 通信・投稿

私の健康法(2)

片岡 健

■正座・土下座は体操か?
 ここで初めて上体を起こしてパートフォー。まずは片足を伸ばし片足は胡座(あぐら)で、胡座の方の足の指間に手の指を差し込んで足指を広げる運動、続いて足の指と手の指を組んだ状態のまま、余った手の親指で足裏のマッサージ、とくに土踏まずをくまなく指圧する。左右を交互にしたあと、両脚を伸ばし、手で足指を四本つかんでの上体屈伸運動。
 そのあと、足を組み直して正座の姿勢をとる。座ってできる運動が首の運動。こうべ縦振り、はてなの横振り、イヤイヤ横振り、そしてゆっくり首の回転。昔から借金で首が回らないというが、首を十分に回すことで今日のひどい経済時局に立ち向かう体力を整えよう。
 これが終わったら土下座となる。腹式呼吸を兼ねて鼻を地面に擦りつけて、参勤交代のお殿様が通り過ぎるのをじっと見送る風情。一年ぐらい前から思いついて、正座のあと、両手を前に突き出してお辞儀をしてみると、なんとアラーの神にお祈りを捧げるイスラムのフォーマットになるから不思議だ。最近は、額を地面に擦りつけての上体投地のあと、立て膝のように両足指を立てて、はずみをつけて足の指を反らす動作を加えている。形だけであるが、異文化もまた己の健康法に応用させていただいている。

■奥の細道
 ここでやっと立ち上がる。立ち上がりざま、足の脛(すね)の筋肉を空手チョップの要領で強く叩いてやる。この動作をやりながら、なぜか奥の細道の旅に出かける松尾芭蕉が、足の三里に灸(きゅう)をすえるのに思いをいたす。
 これまでのあらゆる動作はすべて数字で八数えるのを最低四回反復、すなわち三十二回繰り返す。すると、ここまでの所要時間はだいたい三十分。立ち上がったところで、ガス風呂に点火したり、トイレに行き、頂き物の冷水をコップ一杯と、雲南田七の粉末を小指の先ぐらい服用する。

■イチロー回し
 そんな感じで小休止のあと立ち姿でパートファイブ。まずは両手を天、両脇、前方、地面に向かって思い切り突き出す。つぎに二本の腕を平行状態で、ゆっくり大きく回転させる。こうすると、不思議にバッターボックスのイチロー選手の仕草が連想される。さらに腋の下を十分伸ばす側転の運動のあと、身体をねじりながら両手を低い位置から左右に振り回す。さらに両手の角度を四〇度ぐらい開いて円盤投げの序動作のつもりになる。さらに角度を上げて、腕の振りを目線の上にもっていき、身体を回転させながら両手の人差し指だけを伸ばして背中の後方を指す仕草を繰り返すと、それはなぜか日本舞踊もどき。

■小錦をうっちゃり
 次は、両腕をだらんと下げてリズムをつけて腰を左右にフリフリしたあと、輪はないけどフラフープ動作。身体が柔軟になったところで、ガニ股を大きく開いて両手を床につけて、ゆっくりと顔面を極力床に水平に近づける。首を股間に突っ込めば天の橋立。そんな動作をやりながら、体操を始めた当初はまるで身体が固かったのを思い出す。
 このあと上体を仰向けに反らせながら腰の運動をしたり、両手を伸ばして全身を大きく回転させながらよじる動作で、このとき脚を踏ん張りながら頭上後方に荷物を放り投げるつもりが「小錦のうっちゃり」。   (つづく)


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