労働新聞 2003年6月15日号 通信・投稿

ある政治連盟のできごと
自民党幹部の居直りにあ然

看護師 水野 裕子

 例年なら4月に開かれる各種団体の年次定例総会が、今年は統一地方選挙があった関係で、5月から6月にかけて開かれている。私の勤めている病院は、いつのころからそうなっているのか、看護師は全員が看護協会に所属することになっている。都市部の病院ではなかなか考えにくいことだが、個人の意思とは無関係で、就職と同時に入会させられている。そしてがっちり、会費も給料から天引きされている。
 ここまでは、まあ前後の事情や習慣などあり、許容できるぎりぎりの範囲なのかもしれない。しかし、問題は看護協会に入っているものは同時に自動的に「看護政治連盟」に加入する仕組みになっていることである。さすがにここの会費は、給料から天引きするわけにはいかず、徴収方式となっている。そしてこれまた不思議なことに、この看護政治連盟は、なぜか自動的(!)に選挙では自民党候補を推すことになっている。役員会では一応、組織である限り論議され決定されているということなのだろうが、事実は事実である。
 したがって、有力な自民党の支持団体である看護連盟の総会には、県選出の国会議員をはじめ自民党の県議、県連の役員がドッと押しかけ参加するといった案配になっている。  
 その総会が先日開かれた。総会といっても、そんな事情から、気づけば入会していたという人ばかりなので、だれも総会に参加しようなどとは思っていない。しかし動員のノルマが病院に割り当てられているわけで、渋々、看護師の役員が出かけていく羽目になる。
 さてその総会の席上の出来事である。自民党の県の役員があいさつに立った。本人は有力県会議員で、話題となった「不正献金事件」で県民の非難を浴びて、目下、自民党「浄化」、県議会改革に先頭を切って「活躍」すべき有力人物としてマスコミにもたびたび登場し、発言している。総会参加者もそのことを知っている。その人物が、どのようなあいさつを行うのか、皆の関心を集めた。
 ところがこの自民党と県議会改革に全力で取り組むと発言してきた有力議員いわく、「世間の批判を浴びて申し訳ない、改革に邁進(まいしん)する」 と言うのかと思ったら、これがとんでもない間違い。なんと、「(政治)倫理、倫理で聞こえは良いが、リンリ、リンリでは飯は食っていけない!」と、傲然(ごうぜん)と開き直ったのである。和やかな会場は一瞬、水を打ったようにしーんとなり、壇上の同僚の自民党国会議員は苦笑もできず、しかめっ面に。常々テレビカメラの前で話した発言とまるで180度ちがう内容に、参加の看護師会員は、思わずあ然となった。
 この有力県議は、支持団体の前で大いに気を許し、自分たちのかねてからの本音を率直に訴えたのであろう。選挙で金を使い果たし、企業献金は集まらず、積極的に集めようとすればとかくマスコミと世間の目がまだ光っており、せっぱ詰まって悲鳴に近い本音をあげたのである。まったく反省も何もないとはこのことだが、彼らの悲鳴に近い危機の実際が、図らずも暴露された。余力があればもう少し聞こえの良い適当な政治的発言でその場をごまかすこともできたのであろうが、それができなかったのである。
 総会は例年しゃんしゃん大会であり、議案は提案どおり拍手で採択されるのが通例である。ところが、有力県議のご立派な発言を聞かされた後だけに、今年はそうならなかった。連盟会員の負担の増額となる議案が提出されたが、拍手が起こらなかった。壇上の議長があわてて何度が拍手を促したが、会場は引き続き沈黙を守ったまま、ぱらぱらの拍手さえ起こらなかったのだ!
 地方政治の中で、危機がどう進行していくのか、ありありとした実際を勉強するまたとない機会となって、私には妙な意味で有意義な大会であった。でも、一体あの議案は可決されたことになっているのだろうか…? 今度、聞いてみよう。


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