労働新聞 2003年4月15日号 通信・投稿

不当解雇との闘い
3カ月の闘い(その2)
退職金+給料12カ月分+有給買い上げ
毅然(きぜん)と闘い要求かち取る

地域合同労組 島田作次

 前号で、リストラの背景と労働組合の結成、第一回の団体交渉を行ったことなどの経過にふれました。その後は団交の度に組合ニュースを発行してきたので、組合ニュースの見出しから、団体交渉を追ってみます。
 第2回団交「こんな条件では退職に応じられない」。第3回団交「あいまいで一貫性のない会社の説明! 指名解雇の違法性を否定できず」。第4回団交「長期戦も辞さず、要求実現を目指す」。第5回団交「歩み寄りの姿勢見られない会社側、地労委への提訴」。
 組合としては、団体交渉の場で会社側の説明を逐一論破してきました。解雇が不当なのだから退職条件の上乗せをと要求しても、会社は退職金+給料の3カ月に固執していました。「不当解雇を撤回せよ!」という要求ではないので、こちら側の迫力不足を振り払うのが大変でした。
 「長期戦も辞さず」は地労委への提訴を念頭に置いた会社側に対する宣伝で、組合員の本音は早期解決でした。実のところ地労委への提訴は、数カ月間かかるかもしれないと担当者に言われたときは、いろいろと悩みました。
 だが、劇的な変化が訪れたのです。組合が地労委へ持ち込んだ数日後、「白紙撤回」するので再度団交を開きたいと会社側から申し入れがありした。この時は会社の意向もつかめぬまま、団交に臨みました。
 会社の説明は、昨年12月に通告した「解雇を撤回する」という予想外の説明でした。これまでの団交で、解雇通告された4人に対し、「あなたの仕事がない、再配置も難しい」と頑なに言っていた会社が、180度方針転換してきたわけです。リストラばやりのご時世に、解雇撤回は意義ある闘いなのです。会社側が解雇を撤回すると言っているのに、組合側が条件闘争を進めるという厄介な問題に直面しました。
退職条件をどのようにして引き上げるか、苦労しました。思いついたのが「覆水(ふくすい)盆に戻らず」という格言です。「会社に用がないと通告された人が、もう一度がんばってくれと言われても、意欲がわいてこない」、「解雇通告された人たちと社員との溝も広がっている」ので、白紙撤回と今さら言われても納得できないと主張しました。
 この言い分には会社も反論できませんでした。会社側も新体制の下で、経営戦略を見直して再出発を図りたいとの要求を持っていました。地労委へ持ち込まれ、「整理解雇四要件」を何一つ満たしていない点を公の場で暴露されるのも、都合が悪かったに違いありません。
ある意味では、双方とも早期解決を望んでいたので、最後の詰めは比較的簡単に行きました。最終的には、会社都合による退職金に給料の12カ月分、一律25日分の有給休暇の買い上げで合意しました。

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 数日後、「解雇撤回闘争」を共に闘った4人が「慰労会」を開いてくれました。この争議の途中、ある産別のオルグと懇談した時に「退職金の上乗せとして賃金の6カ月分の上乗せを取れれば良い方」と言っていました。組合としても、決して悪い条件ではなかったと思っていましたので、慰労会は和やかなものになりました。
 うれしかったのは、数人が「組合に残って今後も協力したい」と言ってくれたことです。私たちの組合は「会社を辞めても、希望すれば組合員としてとどまる」ことができるのです。企業内組合では難しいことですが、「工場・経営と地域に労働者の生活と権利を守る砦(とりで)を!」を合言葉に、これからもがんばっていきたいと思います。


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