労働新聞 2003年4月5日号 通信・投稿

不当解雇との闘い
3カ月の経験(その1)
リストラ解雇は許せない
労働組合結成して団体交渉

地域合同労組 島田 作次

 「突然解雇通告され、一同途方にくれています。なんとか相談に乗っていただけないでしょうか」。こんなメールが届いたのは、昨年の12月でした。早速、電話をすると「仲間もいっしょに相談に行きます」と急いでいるようすが伝わってきました。
 解雇されたのは、社員100人ほどの自動車関連の製造業で働いている中堅・幹部社員ばかりでした。最近、経営陣が一新されたようです。新体制に伴うリストラ計画が発表され、約10人のリストラ対象者のうち、納得できない人たちが相談に来たのです。個別に会社側に呼び出され、「あなたの仕事がないから辞めてくれ」の一点張りで、皆途方にくれていたのです。
 解雇に至る経過を聞いてみると、「整理解雇の四要件」(注)を何一つ満たしておらず、不当解雇そのものです。労働組合を結成して闘うように勧め、そのための協力は惜しまないことを伝えました。初めての経験で、労働組合とも無縁なこともあってか、「明日4人いっしょに会社と話し合ってみます」というのが、その日の結論でした。
 連休明けの日、「会社と話し合っても何一つ進展しなかったので、合同労組に加盟したい」と連絡がありました。組合加盟の用紙に記入してもらい、会社への組合結成通告と団体交渉申し入れなどの相談を行いました。
 数日後の団交の日、予定時間より早めに会社に着くと、やや緊張気味の4人が出迎えてくれました。第一回の団交に、会社側から社長、常務が出てきました。組合の要求を文書であらかじめ提出していたので、会社側から何か説明があるかと思っていました。ところが、解雇問題について何の説明もなく、改めて組合の要求を聞くという態度でした。
 会社側は解雇問題を軽く考えているのか、組合対策が分からないのか、やや拍子抜けしました。相手のペースにはまってはいけないと思い、当組合の宣伝を行い、相手を圧倒することにしました。
 当組合は、企業内組合ではないから企業の買収工作
と無縁であり、徳川家康がつくりあげた三河武士団のように「質素だが、結束して闘う組合を目指している」こと。最近は少なくなっているが、「泥沼の争議も辞さない」など、不当解雇に対する抗議の気持ちをこめて組合の態度を示しました。
 社長にとって地域労組の経験がなかったのか、顔つきは時々引きつっているのがよく分かりました。その後、組合結成を認めさせるために「組合掲示板」の設置について会社側と合意し、第一回の団交を終了しました。
 その後の団交では、不当な解雇理由を逐一論破していきました。ある時は、組合役員の友人の税理士に頼んで経営分析をやってもらい、会社の資産状況を調べました。弁護士とは裁判闘争の下相談を行ったり、闘争全般に手を打っておきました。組合の追及に対して、会社は整理解雇四要件を満たしていない「不当解雇」を認めざるをえませんでした。
 相談に来た時から、4人の要求は「解雇撤回」ではなく、退職条件の上乗せでした。私は職業安定所の求人情報などを伝え、再就職の厳しさを話しました。そして、今の職場でがんばることを勧めましたが、すでに愛想が尽きたのか、会社に見切りをつけられた悔しさか、「解雇撤回」を柱にした闘いとして進めることにはなりませんでした。(続く)

<注>整理解雇の4要件
1、人員削減の必要性 
2、解雇回避の努力義務 
3、解雇基準選定の合理性
4、解雇手続の合理性


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