労働新聞 2003年4月5日号 通信・投稿

「賃金奴隷」実感する毎日
就職できたが、うれしさ半分

食品会社アルバイト 川口 正一

 私は、先月やっと就職でき、働き始めました。2年余のあいだ続いた求職活動はとりあえず中止です。「とりあえず」と書いたのは、この会社でいつまで働き続けることができるか不安だからです。
 食品関係のアルバイトの募集をハローワークで見つけ、とりあえず生活資金のために、働こうと思いました。
 フードセンターの新規開設なので、相談によっては見習社員として採用可、と書かれてあったからです。時給は650円〜750円。都市部ではビックリするような安さですが、この地方ではだいたいの相場で、悪い方ではありません。週休もあり、週40時間労働との募集要項です。アルバイトなので健康保険などの社会保険はありませんが、労災保険もついており、まずまずと言ったところです。
 さっそく面接に行きました。私は、食品関係では就業経験があり、アルバイトでもあり、即決採用だろうと思っていました。ところが即決ではなく、もう一度来てくれ、上司が面接するとのこと。そして、その上司に再度面接を受けました。
 そこで具体的な話になりました。「アルバイトではなく日給で雇いたい、この業界では週40時間などというのはない、職安の募集要項にそう書いたのは、そう書かないと法律違反になるからだ」と、のっけからすさまじい説明です。そしてきちんとやってくれるなら正社員にしたいと言うことでした。
 私はかつてこの業界にいましたから、週休などというのはないのが常識で、月に一度でもきちんと休みが取れるなら良い方だと思っていました。しかし、それにしても堂々と、職安に出した労働条件はそう書かないと受け付けてくれないからだと言われると、あ然としました。
 ハローワークの募集要項に、うそやデタラメが多く、面接に行くとまるで違うという経験は何度もしてきました。賃金が違う、労働時間が違う、休みの日が違う、ひどいのは募集した会社が違う、という経験もしましたから、あ然としつつも「ああここもまたか」と思いました。
 
休日もなく、13時間労働が続く

 しかし、こちらは職がなく、生活資金も尽き、きわめて弱い立場ですから、迷いに迷いました。3カ月経過したら正社員にする、したがって社会保険や厚生年金などがつくということ、自分の経験した業務の募集はほとんどこれからはなさそうだと判断して働き始めることにしました。
 フードセンターの新規開設という開業日程に迫られているという特殊な状況はあるのですが、働き始めての10日間はまったく休日はなし、その上、朝の8時半から夜は9時半までの13時間労働というありさまです。上司が帰らないので私も帰れないという日々が続いています。しかも、他の部門の人もそんなふうに働いているのです。
 知人の先輩から、「やっと就職できて良かったね。ようやく『賃金奴隷』になれたね」と「お祝い」の言葉をもらいましたが、「賃金奴隷」という言葉が妙にぴったりしているなあと思うこのごろです。とりあえず、3カ月間はおとなしくしておこうと覚悟しています。


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