労働新聞 2003年4月5日号 通信・投稿

俺の賃上げ、たった940円!
会社は史上最高の大もうけ
作業服有料、社宅値上げ、慶弔費廃止…
何とえげつない会社だ

自動車労働者 青山 元

 世間では、この不況下にこの会社が史上最高の収益を上げたとやらで、優良企業だとか、一人勝ちだとか大騒ぎしている。書店にも、この会社をほめたたえる本が山積みされているが、俺たち工場で働く労働者には何の関係もない出来事だ。
 会社は世間は不況だとか、中国の脅威だとかを盛んに言い立て、ますます人減らし合理化を進めている。俺たちは仕事がきつくなるばかりで、何もよいことはない。現場では、毎年1000人近い定年退職者の補充はほとんどなく、まれに補充はあっても数人である。この人手不足に「改善で対策せよ!」と課長は言うだけで、後始末はすべて俺たちに押し付けられる。
 補充された労働者も多くは人材派遣会社からの派遣労働者で、われわれ本工と同じ作業をしているにもかかわらず、半分程度の賃金で働かされているというひどさだ。会社の大もうけは多くの労働者を搾取することで成り立っていることを、改めて実感する。
 また、会社はこれまでも、社内貯金制度の廃止、作業服の有料化、社宅・寮の家賃値上げ、通勤費の引き下げなどチビリチビリと福利厚生のレベルダウンをはかってきたが、今年は父母慶弔費の支給廃止を通告してきた。この好業績なのに何とえげつない会社だろう。
 そして、春闘では組合幹部がまたもや裏切り行為をやっている。やつらは職場の要求を抑え込んでベースアップ要求も放棄した。日本の労働者の低賃金を容認する態度は、連合傘下の組合幹部からも、批判が続出した。
 職場集会でも「こんな好景気の時にベースアップ要求を放棄したら、これから賃上げはないぞ!」との職場の声には「相手は会社ではない、日本経済だ!」と開き直り、なおも質問する組合員を「アカ」呼ばわりして、まともに反論もできないありさまだ。
 3月12日の会社からの賃上げ回答はほぼ予想通りだったが、組合から配られた賃金配分表を見て俺は驚いた。30年以上工場で働き続けた俺の賃上げはたった940円だ。Kさんはもっと惨めだ。なんと賃上げどころか、1060円の賃下げ! これが史上最高の業績を上げた会社のベテラン労働者の「賃上げ」だ。これも、会社と組合が進める「新しい賃金制度」によるものだ。これは、中高年の賃金を無条件にカットして年齢給を実質的に無意味にし、やがて年齢給を廃止し職能給に一本化するという魂胆で進められてきたものだ。そして、その職能給一本化は来年度から導入される予定だ。これにより、労働者同士がますます争うことを強いられ、中高年の賃金、とりわけ俺たち落ちこぼれ中高年労働者は賃金カットをまともに食らうことになる。試算では3万円以上減額になりそうだ。
 今年からは、一時金からも健康保険料が大幅に引かれ、医療費の自己負担増など俺たちの生活は苦しくなるばかりで、これこそ踏んだり蹴ったりだ。
 会社が史上最高の収益を上げても、俺たちの生活はよくならないどころかますます悪化していることに、労働者としての怒りがますますこみ上げてくる。


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