労働新聞 2003年3月25日号 通信・投稿

小泉の詭弁、ブッシュの誤算

市村加代

 3月20日、米国がイラク侵略戦争を開始した。仕事帰りに駅を通ると、若者たちが一生懸命「イラク戦争反対」の署名を呼びかけている。道行く人たちが、つぎつぎに署名をしている。こんな光景は久しぶりだ。多くの人びとが、イラク戦争の回避を切実に願っていたことが分かる。私ももちろん署名をする。
 家に帰ると、娘が「北朝鮮がミサイルを撃ってくるかもしれない」と言う。こんな話がちまたで流れているらしい。こういう根拠のないうわさ、デマを流言という。
 この流言の発信源の一つは、間違いなく小泉首相にある。小泉首相は米国が開戦を宣言するといち早く「支持」を表明したが、その発言の中で、大量破壊兵器が「危険な独裁者の手に渡ったらどのような危険にあうか、日本も他人事ではない」と述べたからだ。
 これは一国の首相の発言とは思えない、きわめて軽率な発言だ。「他人事ではない」ということは、日本も同じような危機に直面しているということで、それは「北朝鮮の脅威」を指していることは疑いない。自ら訪朝し、国交正常化を急ごうと合意した相手に、投げかける言葉だろうか。
 小泉首相は、北朝鮮の「危険な独裁者」が大量破壊兵器を手にしたとしたら、米国の軍事力に頼るしかないから、米国のイラク戦争を支持しなくてはならないというのだ。
 「ちょっと待ってください、小泉首相。その理屈はちょっと変じゃないですか。イラク戦争と北朝鮮外交はまったく別の問題でしょう」と言いたくなる。
 小泉首相は「国連中心主義」を投げ捨て、「日米同盟」を優先したことを正当化するために、イラクとは何の関係もない「北朝鮮の脅威」を引き合いに出したというわけだ。そして、ごていねいにも平壌宣言の破棄までちらつかせ、北朝鮮敵視をあおっている。
 こんなご都合主義、対米追随の外交で、果たして近隣諸国の信頼をかち得ることができるだろうか。
 テレビやインターネットでイラク戦争を見ている子供たちも、不安を感じているようだ。イラク戦争のどさくさにまぎれて、こうした流言を垂れ流し、北朝鮮敵視をあおろうとする人びとを許せない。
 それにしても、凶暴な米帝国主義には強い怒りを感じる。ブッシュ大統領は世界の保安官になってフセインと闘っているつもりだろう。しかし、彼が闘っている相手は、フセインではなくアラブ民衆である。敵の大きさを知らずに闘いに挑んだブッシュと米帝国主義は、自分たちが大きな誤算をしていたことに、やがて気づかされると思う。


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