労働新聞 2003年2月25日号 通信・投稿

大阪の顔

三崎 健一

 大阪には特徴的な二つの「顔」がある。
 一つは、ハローワークに詰めよせる失業者の人たちと、いまや府下一帯に広がっているホームレスの人たちの青テント。もう一つは、大阪南港や関西新空港対岸に広がる大規模開発によるビル群。
 アジア太平洋トレードセンター(ATC)445億6000万円、ワールドトレードセンター(WTC)317億2000万円、大阪シティエアターミナル(OCAT)166億4000万円など、大阪市が出資し推進した第三セクターの累積赤字は、すでに千百億円を軽く超えている。
 すでに大阪市は、この赤字団体に九百億円近い貸し付け(主に大銀行への借入返済)を行っている。
 大阪府も同様で、すでに破たんしたりんくうタウン(関空関連事業)に固執し、新たな起債や貸し付け、進出企業への助成など、いたれりつくせりの誘致活動を行い、それでも一向にすすまぬ分譲に対して、今度は「カジノ」特区を申請するなど、府民の失笑を買っている始末である。
 「関空への玄関口」として鳴り物入りで難波に建設したOCATは、あまりの利用客の少なさに昨年から国際線搭乗窓口を閉鎖し、いちばん目立つ一階のフロアには「百円ショップ」が大きな顔で居座っている。WTCやATCも港湾局や水道局など、市の関連施設を大量に入居させ、何とか空き室を減らそうと、やっきになっている有り様だ。
 やはり大阪市が出資し、通天閣の近くにオープンさせたフェスティバルゲート(都市型アミューズメント施設、つまり遊園地)も閑古鳥が鳴いており、先日待ち合わせのために園内のコーヒーショップに入ったところ、客は一人もおらず、店員も中に引っ込んでしまっており、大声で店員を呼びやっと出てくる有り様。一時間その店にいたが、客はずっと来ないままだった。97年のオープン当時は、69のテナント店があったようだが、今は十九店に減ってしまったらしい。
 何やらこう書くと、あまりにいいかげんな関西人の姿だけが「吉本喜劇」のイメージと重なり増幅され、情けなくなってくるが、笑い話ですむことではもちろんない。
 三セク事業赤字の穴埋めに使われている公金(われわれの税金)を、資金繰りに四苦八苦している中小企業や、将来の生活不安におびえている失業者、ホームレス対策に使ったら、どれだけの人たちが助かることだろう。
 つけ加えれば、大阪では最近、やたらとJRや私鉄の遅れが目立っている。大概の理由は「人身事故」--
飛び込み自殺によるものだ。
 今日も電車の遅れにイライラしながら、「皆の怒りを、政府や大阪府、大阪市の政治に向けたい!」と思う。


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