労働新聞 2003年2月5日号 通信・投稿

仕事減りタバコ量増える
再就職したものの…
給料10万円で生活できるか!
子供の就職も悩みのタネ

タクシー運転手 篠田 宗介

 昨年リストラにあい、やむなくタクシーの運転手をしています。給料は手取り10万円ちょっとで、どうやって生活していくか頭の痛い毎日です。こんな安月給でどうやって生活しているのかと同僚に聞くと、おおかた奥さんがパートなどで働いて、やっとやりくりしているようです。実は、これまでの経験をいかして板金関係の仕事についたのですが給料も安く、休憩時間も一定しないため不安もあり、今の仕事をしています。
 JRの駅構内を待機場所としてタクシーの運転をしていると、世相が見えてきます。年末は会社関係の人がよく利用し、「領収書をくれ」と言うお客が結構いましたが、このごろは少なくなりました。
 また、駅の近くに工業団地があるので会社までの利用者が、会社の名前を言って乗り込みます。そんな時、私が会社の場所を聞くと、皆いやな顔をします。「一流会社なのに行く道が分からないのか!」と言わんばかりです。行き先が中小企業でも同じ反応を示すときは、内心笑ってしまいます。
 先日は、朝から雨で駅構内で待機していてもお客が少なく、午前中の水揚げが2000円程しかいきませんでした。慣れない「流し」でもと思って近場を移動してみましたが、さっぱりでした。
 車の運転中は、信号や走っている車に気配りするだけでなく、肝心の「お客」を探すので本当に疲れます。水揚げが伸びない時は余計にタバコに手を出してしまいます。身体には良くないと分かっていても、そうでもしなければイライラもおさまりません。
 頭の痛くなるもう1つの問題は、子供が高校3年で進路が決まっていないことです。就職するにしてもこの大失業時代で、なかなか仕事が見つかりません。さりとて「専門学校」といっても金がかかるし、どうしたらよいか考えさせられてしまいます。
 たまに顔を合わせる時、「どうするのか」と聞こうと思うのですが、金のかかる専門学校へ行きたいと言われてもそんな余裕もないので、出かかった言葉を飲み込んでしまいます。小泉政権は、改革を進めるため不良債権処理を断行すると言っています。失業者がさらにあふれ、景気が悪くなれば「お客さんが減る」という悪循環から抜け出せません。
 私も、水揚げが落ちてタバコの本数が増えるという係数から逃れられそうにありません。その上、タバコ税の増税が予定されています。貧乏人には本当に暮らしにくい世の中となっていますが、この怒りをどこへぶつければよいのか、水揚げの増えることを期待して、今日もハンドルを握っています。


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