労働新聞 2002年12月5日号 通信・投稿

なばな通信

食・健康・農業の話(3)
なぜ遺伝子組み換えイネを栽培?

大橋 咲子

 今年は冬が早くきましたね。毎年、気候がおかしくなっています。温暖化というのは平均気温が上昇するだけではなく、各地で異常気象が起きるようです。オーストラリアなどは大干ばつで穀物生産が平年の3割などという地域も出ています。ヨーロッパでは未曾有の大洪水。
 わが家も有機農業なのでとても大変です。作物は春と秋に育つのですが、近年は夏の次にすぐ冬がきますし、冬のあとにすぐ夏がきます。問題なのは、今年はどうなるだろうという予想が立たないことです。
 2〜3カ月先の気候を読んで種まきをしなくてはならないのですが、これがわからないのでバクチのような生産計画になり、外れると全滅したりしています。
 いったいこれから先の農業はどうなってしまうのだろうと思います。日本の基幹的農業従事者(皆さんが食べている農作物を作っている人たち)の半分ぐらいは65歳以上ですから、しんどい農業は大変だろうと思います。
 今、日本で自給できるのはコメぐらいのものですが、これは手がかかるので、省力化、コストの削減が研究されています。そこで、愛知県の農業試験場と米国のモンサイト社が協力して、除草剤をいくらかけても枯れないように遺伝子を組み換えたコメの試験栽培をしています。モンサイトは来年にも、このコメを食品、飼料として国に許可を申請するようです。
 愛知県は県をあげてこの遺伝子組み換えイネの安全性と必要性をキャンペーンしているようです。愛知県はトヨタ立国。おコメの輸入自由化の時も、自動車業界はこぞって輸入自由化のために動いていました。今までの遺伝子組み換え大豆やトウモロコシなどは、米国で実験して、生産して、日本に許可申請し、輸出するというやり方でしたが、今回は愛知県を使い、実験生産していることに何だか不安を感じます。
 何といってもこの遺伝子組み換えイネは消費者に何のメリットもないのです。つまり、消費者はスーパーで「あら、遺伝子組み換えの○○だわ。買ってみよう」などとはけっして思わないのです。
 イネというのはコメの1粒1粒に花が咲き受粉するのです。トウモロコシもそうですが、大変交配のしやすいもので、遺伝子組み換えの花粉が飛ぶと受粉してしまいます。狭い日本ですから、遺伝子汚染が進む恐れがあります。消費者は組み換えたコメを買わないでしょう。
 ブラジルでは遺伝子組み換えの農作物の作付けを禁止しています。各州でも厳しい州規律を作り、検査も行われています。主に、EU(欧州連合)に輸出していますし、注文が殺到しているようです。私が消費者なら狂牛病の時のように、不確かな日本のものより、外国の安全なものを選択するでしょう。
 政府は、今までやっていた減反を農業団体に肩代わりさせることを決めました。これ以上、米価が下がったらまともな生産者はコメ作りをやめてしまいます。
 日本の将来を考える時、農業はとても大切なのです。なぜなら食料がなければ1週間と生きていけなのですから…。 (完)


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