労働新聞 2002年11月25日号 通信・投稿

合併めぐり地方政治は大揺れ

議会内でも激しい争奪戦
住民には孫の代まで負担増

野原 真造

 2005年3月の「市町村合併の特例に関する法律」(以下、特例法)期限内での合併をめざして、全国で市町村合併に向けての動きが急ですが、わが市も例外ではありません。
 わが市も含む2市4町2村の任意合併協議会が発足したのは、今年8月でした。昔の郡の範囲で「地形的にも歴史的にも関係が深く、住民生活や行政のつながりから見ても一体感が保てるため」(「新市将来構想」より)ということで、任意協議会ができました。
 それからわずか2カ月もしないうちに「新市将来構想」ができ上がり、いま市役所からその要約版のパンフレットが市民に配布されています。「これを参考に十分な協議、議論を進めていただきたい」と書いています。
 しかし、実際に特例法期限内に合併を実現するには、今年度中の法定協議会設置が必要で、十分な協議や議論をする時間などありません。「合併は市長村やそこに住む住民の皆さんにとって、お子さんやお孫さんの代までかかわる非常に重要な歴史的事業です」(「新市将来構想」より)という割には、あまりにも性急な合併への動きで、大半の市民には関心はあっても「どうなるんですかね」という程度の情報しかもたらされていません。

 
二股かける町村も 
 
 さらに、任意協に参加している8市町村のうち、3つの市町村は別の市との任意協議会にも参加して二股をかけているのです。どっちの将来構想も「悪くなる」とは書けませんから、「良くなる」というのでしょうが、市民はどっちを信用すればいいのか分かりません。
 さらに、最近になってわが市議会のうち約半数の議員が参加して、別の郡ですが西隣りの町との合併協議会の設置を求める署名運動を始めました。
 「住民にもっと選択肢を与えるべきだ」というのが表向きの理由ですが、参加している議員のほとんどが市の西半分地域の出身で、今の郡単位の合併では、新しい市の1番西の端になってしまい、今でさえさびれているのに、これ以上はたまらんという危機感からのようです。逆に西隣りの町と合併すれば真ん中になるということです。
 農協の広域合併でも、本所は隣の市にもっていかれてしまった、という不満もあります。さらに、8市町村のうちの3町村は人口1万人以下の山村で、「そんなところと合併しても何の利益にもならん、損するばかりだ」と言っています。
 合併特例法期限内に合併すれば、最高640億円の特例債による借金ができることになっています。交付税による措置があっても200億円近い借金をあらたに背負い込むことになります。それこそ、子や孫の代にまで借金のつけをまわすことになるのです。
 どう考えても合併で良いことはなさそうです。だけど「合併は時代の流れだから仕方がない」という雰囲気がつくられています。旗をふる国や県の本当の狙いや、住民に犠牲が押しつけられることを、もっと積極的にまわりの人に知らせていかなければと思います。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2002