労働新聞 2002年11月15日号 通信・投稿

なばな通信

食・健康・農業の話(1)
旬のものは健康の基本

大橋 咲子

 今年は秋がなく、夏から一気に冬になったようです。有機農業で生計を立てているわが家は、とてもたいへんです。
 何しろ、10月まで虫の被害がひどく、全滅の種類も多く、やっと本格的に種まきをして、さあこれから作物が成長するという時に、霜が降りるほど寒くなってしまいました。
 有機農業を始めて10年ぐらいたちます。最初は本を読みながら、仕事の片手間にぼちぼちとやっていましたが、とことんこだわって作物をつくると、とてもそんなことはできない。いっそのことと、専業農家になりました。
 アトピー性皮膚炎の長女が学校給食を食べるのをやめてお弁当に変え、野菜と大豆製品、魚を中心とした食生活に変え、もちろん農薬や添加物は一切排除したところ、全身に見られた発疹が1年できれいになりました。同じような食生活を勧めた花粉症の友人も、1年で症状がなくなりました。
 食と健康のかかわりはとても大切なことです。そこで読者の皆さんに、健康で長生きしていただくために、シリーズで食、健康、農業のことについてお便りすることにします。
 健康のために野菜を食べたほうがよいと思う人は多いと思います。ファミリーレストランやランチなどで野菜を食べようとすると、サラダつまり生野菜が多い。それも1年中、レタス、トマト、きゅうりなどが入っている。スーパーでも、これらの野菜はいつも売っています。手軽に飲める野菜ジュースは、トマトが中心です。でも、トマトは夏の野菜です。きゅうり、トマト、ナスなどの夏の野菜は体を冷やす作用があります。


無農薬で元気に育ったキャベツ

 小児科の先生に「他の問題が見当たらないのに夜泣きをする赤ちゃんは、風呂上がりにトマト系のジュースを飲むのをやめさせて、ネギなどの体を温める野菜でつくった湯冷ましを飲ませると夜泣きがほとんどなくなる」という話を聞きました。
 体に比較して胃袋の大きな赤ちゃんは食べたものの影響が大きいので、寒い時に体を冷やすものを与えられると、冷えて眠れないということでした。
 そういえば、人間の歴史の中で、冬でも夏野菜が食べられるなどということは、ほんの最近のことなのです。人間は自然の中で育った作物を食べて何千年も生きてきたのですから、体もそういう仕組みになっているのです。
 反対に、冬野菜は体を温める作用があり、春の野菜は動かない冬の間にたまった、体の毒素を排出する作用があります。季節、旬のものを食べるということは、健康の基本です。
 次に大切なのは、土地のものを食べるということです。
 カルシウムを補うために牛乳を飲むというのは、学校でも奨励しています。でも、日本人は長い間牛乳などの乳製品を摂取する習慣がなかったので、胃に乳糖をカルシウムに分解する酵素をもっている人は3割しかいません。日本人には、小魚や小松菜、納豆などの食事がカルシウムを補うベストの食べ物なのです。
 疲れたらスタミナをつけるために肉がよいと思っている人はいませんか。これが今の日本人の、最大の病気の原因にいなっています。                                        (続く)


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