労働新聞 2002年11月5日号 通信・投稿

演劇紹介

劇団ふるさときゃらばん 
サラリーマンミュージカル

「パパの明日はわからない」
働く誇りを歌い上げる

演出:石塚 克彦

 劇団ふるさときゃらばんのサラリーマンミュージカル「パパの明日はわからない」の全国公演が始まっている。日本のサラリーマンの多くが直面しているリストラがテーマだ。不況が深刻化し、倒産、失業、自殺が蔓延する中で、働く意味を前向きに考えようとする作品だ。出口の見えない閉塞(へいそく)した時代に、労働者の生活に視点をおいた明るいミュージカルが、多くの人びとの共感を呼んでいる。

 満員電車でゆられて会社に流れていく、サラリーマンの日常生活の描写から舞台は始まる。
 大手冷凍食品会社に勤める主人公の栗木は、リストラに手をつけ、中年社員ぺこちゃんに解雇を言い渡した。ぺこちゃんは泣く泣く会社を去っていった。
 商品開発部長になった栗木は、新商品の開発に社運をかけることになる。パートの女性たちの知恵もかき集めて、新商品開発を急ぐ。栗木は地方の営業マンが出した山里の料理「キジ焼きめし」を採用する。しかし、栗木も会社にとっていらない人間になっており、会社を辞めざるをえなくなってしまった。
 ところが、「キジ焼きめし」が大ヒットとなった。工場はフル操業、注文に生産が追いつかず欠品を出してしまい、会社は大慌て…。
会社を辞めた栗木を待っていたのは、崩壊寸前の家族だった。会社のために働き続けたた栗木はあ然とする。専業主婦から脱皮して仕事を始めた妻に代わって、栗木は専業主夫となる。家事いっさいを請け負い、その合間にハローワークで職さがしの毎日が始まった。しかし、なかなか職はみつからない。栗木は「この日本はどうなっているの」と嘆き、怒る。

 やっと、スーパーマーケットの店員という仕事が見つかる。父親の必死で働く姿を見て、家族の絆をとりもどしていくというストーリーだ。
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 リストラ、解雇、パート労働者たちの工場現場、営業マンたちの働き、ハローワークでの職探し、家庭崩壊、女性の自立……多彩なテーマがちりばめられているが、一つひとつうなずける内容となっている。
 「仕事と家族」という身近な問題が、ミュージカルというはなやかな舞台にどう表現されるのだろうかと思ったが、サラリーマンの日常生活がこまごまと描かれ、彼らの心境がしみじみと伝わり、なんの違和感もなく受け入れることができた。また、表情豊かな「下座バンド」の生演奏が舞台に迫力をそえ、劇全体をもりあげる上で大きな役割を果たしている。
 全員がそろうフィナーレの「私たちは仕事をして生きている」との力強い歌声が印象に残った。当たり前のことだが、仕事がなければ労働者は生きられない。リストラされるサラリーマンの現実を直視しながら、働くことの誇りを訴えかける姿勢に共感を覚えた。
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 劇団ふるさときゃらばんはカントリーミュージカルとサラリーマンミュージカルという二つの分野を中心に、全国で公演活動を行っている劇団だ。100人のスタッフ・役者が活動し、農村地域や都市のサラリーマンの生活、社会に起きている身近な問題をミュージカルにしたてるという発想はとてもユニークだ。
 今年は、「瓶が森の河童(しばてん)」という農村の環境問題をテーマにしたミュージカルも発表している。これも、楽しいミュージカルに仕上がっている。
 ふるさときゃらばんの公演日程は上記のホームページに掲載。問い合わせは同事務局へ。

ふるさときゃらばん事務局 http://www.furucara.com/
TEL:042-381-6721 FAX:042-383-8614


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