労働新聞 2002年10月15日号 通信・投稿

住基ネットでてんてこ舞い
通知書を全世帯に書留配達
合理化で誤配が増加

郵便配達員 井上 雄太

 労働新聞の読者の皆さん、こんにちは。とりわけ、郵便局で働く皆さん、お仕事ごくろうさまです。
 私は、中くらいの都市の郵便局で、集配の仕事をしています。普通にいわれる「郵便屋さん」です。今、話題の民営化で職場が揺らいでいるかといえば、なぜか、まだ冷静です。不思議ですが。

配達受け持ちは600軒
 
 さて、最近のことですが、例の住民基本台帳ネットワークのことです。もちろん、住基ネットは、個人のプライバシーを無視し、個人を国家が監視・統制するもので、許し難いものです。その上、これが仕事でも負担になり、ますます許せないと思っているところです。
 私の局では、誤配(間違えて違う家に配達すること)が多いので、住基ネットの通知は書留にすることになったのです。これは、とんでもないことです。
 私たちの仕事は、だいたい六百軒くらいを受け持ち単位にしています。もちろん、この数字は自治体の大小で違いますが。それでも、毎日の配達では、だいたい600軒のうち、400軒ぐらいしか郵便はありません。それも大部分はダイレクトメールや電話や水光熱費の領収書です。ちなみに、普通の手紙やハガキはほんの5
%くらいです。まして、書留は十通前後です。それが、住基ネットの通知を書留にするとなると、たいへんです。受け持ちの全世帯に届けるのですから。
 普通郵便(手紙やハガキ)は、ポストに入れればよいのですが、書留は相手に会って、ハンコをもらわなくてはなりません。ものすごく時間がかかります。そして、若い人などが多いのですが、ほとんど家にいません。もちろん、何度も行って不在ならマルツ(不在通知書)を入れるのですが。住基ネットの通知を楽しみに待っている人もいないので、まともに返事も来ません。そして、夜間配達にも回しますが、夜も遅い人が多く、不在ばかりです。結局、1カ月の間に書留で配達できたのでは、だいたい8割くらいです。
 では、残りはどうなったのでしょうか。
 郵便局では、日曜日は速達や郵パックぐらいしか配達しません。それが、住基ネットの未配分までが日曜日の配達に回されるのです。これまで、日曜日の仕事は比較的楽でしたが、住基ネットのことだけでも、てんてこ舞いでした。それでも、未配分がすべて配達できるわけではありません。最後は、知らねーぞ! というのが実際です。
 誤配が多いから、書留にしたけれど、その原因は合理化の結果です。どこの局でも職員不足をパートやバイトで補っています。下手をするとホンチャン(職員のことをわれわれはそう呼びます)より、バイトが多い職場もあります。そうした結果が誤配を増やしています。

強制配転で誤配増える
 
 もちろん、われわれホンチャンでも誤配はあり、最近はかなり増えています。それだって、原因は広域人事交流という強制配転の結果です。私も1年ほど前に配転させられましたが、新しい局に移されれば、そこで、また初めから1軒1軒の家を覚えなくてはなりません。
 これは、かなり時間がかかります。番地と名前だけではないからです。家族も覚えなくてはなりません。ときおり、奥さんが自分の親と同居している場合があります。表札に両方の名前があればよいのですが、ないこともあります。慣れた受け持ち区なら覚えていますが、新しい区では、それは時間がかかります。こうしたことが誤配の原因です。

当局の方ばかり向く全逓 
 
 こうした郵便局の状態に、労働組合=全逓はどこを向いているのか。職場ではなく、当局の方を向いています。何とか、公社化・民営化から逃れたいと、さまざまな合理化提案を受け入れてきました。下手をすると、全逓側から合理化を提案しています。でも、不思議なことに組合員は減りません。大都市では、少数派の第3組合があるようですが…。
 やはり、仲間が全逓にとどまるのは、いつかは組合らしくなるのでは、という期待からです。私もかつては全逓の役員をしていましたが、今はまるで別の組合のように感じています。
 新しい局で、まだ仕事も慣れなければなりません。もう少し、慣れてきたら組合のことにも取り組みたいと思います。自分たちを守るのは、職場を向いた組合だと思うからです。
 では、皆さんお元気で。


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