労働新聞 2002年10月5日号 通信

映画紹介
ケン・ローチ監督作品
「ブレッド&ローズ」

米国移民労働者の闘い描く

 この映画は、米国の最下層の労働者の劣悪な労働条件と、それを改善するために立ち上がった移民労働者の姿を描いたものだ。
 映画は、メキシコ人の若い娘マヤが、国境を走って越えるところから始まる。明るく機転のきくマヤは、ロサンゼルスに住む姉のローサを頼って、米国に不法入国したのだ。
 マヤはローサが働くビル清掃会社に就職することができたが、そこには中南米諸国、ロシアなどから来た人びとが働いていた。
 仕事中、マヤはビルに潜入してきた組合オルグのサムを助けることになる。サムは賃金が20
年前より低くなっていること、健康保険もないことを指摘し、労組に入って闘うように呼びかけた。
 マヤはサムの話に興味を持ち、職場の仲間といっしょにサムの話を聞くことにした。サムは労働者の賃金がピンハネされていること、労働者の権利を教えた。
 この集まりを知った管理者は、2度とこのような集会を開いたらクビにすると脅しをかけてきた。管理者はだれが組織者なのか聞きだそうとベテランの女性労働者に聞くが、答えなかったためにクビにしてしまった。マヤは大きなショックを受ける。会社は卑劣な手段で労働者を分断していくが、労働者たちは攻撃の中でしだいに団結していく。
 マヤたちは経営者に圧力をかけるために、ビルオーナーが開くパーティに潜入して、抗議行動を行った。しかし、ローサが裏切り、たくさんの労働者が解雇されてしまった。マヤはローサの裏切りをなじるが、売春しながら必死に生きてきたローサの怒りや悲しみを知ることになる。
 マヤたちは清掃労働者からの応援を受けて、大規模な抗議行動を展開することにした。「ブレッド&ローズ」と書かれた横断幕を掲げた移民労働者たちは、会社に押しかけた……。

*  *  *

 ケン・ローチ監督は労働者階級の生活を描き続けているイギリスの映画監督だ。ストーリーは、ロサンゼルスで2000年に勝利した全米サービス労組のジャニター(清掃サービス)支部の闘いをモデルにしており、撮影は米国で行われた。プロの俳優とともに現地労働者が多数出演している。
 映画の題名である「ブレッド&ローズ」というスローガンは、1912年、米国の移民労働者1万人が労働条件の改善を求めて闘った時に掲げられたものだ。それは、パン(生活)とともにバラ(尊厳)をかち取る闘いだった。
 それから90年が経過したが、「世界一豊かな国で、なぜ私たちの生活はこんなに苦しいのか」と訴える、移民労働者の闘いは、今も続いている。
 マヤはメキシコに強制送還されるが、そこで彼女がどのような闘いを開始するのだろうか。ラストシーンは、仲間を救うためには泥棒だっていとわない、マヤのたくましい行動力と明るさに希望を託している。
 現在の移民労働者の問題は、グローバリズムの下で米国だけが繁栄し、貧しい国はますます貧しくなるという構造と切り離すことはできない。
 大きな犠牲を払っても米国で働かなければ生きていけない人びとに光を当てることで、グローバリズムの矛盾がさらけ出され、米国が労働者にとって「自由の国」でないという現実が見えてくる作品だ。(U)

東京、福岡で上映中


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