労働新聞 2002年9月15日号 通信

有明漁民 工事現場に座り込み
堤防工事を実力阻止へ
知事は県民のために闘え!

 

福岡県 石本 英男

 本紙でも報道されたように、諫早湾干拓事業の調整池と干拓地を仕切る前面堤防工事に反対して、7月29日から、福岡、佐賀、長崎3県の漁業の有志ら200人が工事阻止のための座り込みを続けています。
 8月末、福岡県有明海漁連は、前面堤防工事差し止めの仮処分申請を行うことを決めました。また「国とは法的に戦うが、実力阻止もやむを得ない」として、工事阻止のため工事現場出入り口での阻止行動を組合長会議で決定、9月2日から、座り込みに入っています。
 佐賀県有明海漁連、熊本県漁連は、仮処分申請には同調しないという方針をとっています。
 しかし、佐賀県有明海漁連の18漁協のうち13漁協が8月29日に工事に反対する抗議行動を大規模に展開し、諫早市や長崎市内でのデモ行進などもやられました。抗議行動は9月末まで続けられる予定で、佐賀県有明海漁連は、漁連としての阻止行動はしないが、各単協の阻止行動については「黙認する」ことを組合長会議で決めました。
 前面堤防工事の本格着工を前に、有明海漁民の実力行動が次第に広がりはじめています。
 昨年のノリ不作や魚介類の激減など有明海の異変と工事との因果関係を探るため、潮受け堤防の短期開門調査が今年4月から実施されましたが、その結果もはっきりしないまま堤防工事に入ろうとする農水省に対して、漁業者らは不信を募らせています。また漁業者だけでなく開門調査を提言した農水省の調査検討委員会の専門家からも、不信の声が上がっています。
 中長期の開門調査を提言した調査検討委員会の提言を「最大限尊重する」といいながら、一方で2006年度の工事完了目標を「厳守する」と強調、漁民の反対を押してでも工事を強行しようとする農水省の姿勢が、漁民らの目に「有明海の再生を本気で考えていない」と映るのは当然です。
 農水省OBが天下りしている工事受注のコンサルタント会社とのゆ着や、ゼネコンの自民党長崎県連への政治献金など、さまざまに批判が起こっています。

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 雪印牛乳の問題やBSE問題での日本ハムをはじめ食肉各社の牛肉偽装問題などなど、不正、不祥事が相次いでいます。不正が暴露されるたびに「責任の取り方が足らん」といって企業トップの人事にまで口を出して大きな顔をする農水省ですが、本当にそんなことが言えるのか、と言いたくなります。
 企業としての社会的責任が厳しく問われるのは当然ですが、農水省には責任はないのか、本当は農水省の農業政策の問題じゃないのか、農水省はそうした業界、企業としっかり結びついていたでのではないか、武部農水大臣はいつまであつかましく大臣をやっているのか、と言いたいです。

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 ところで、わが県の麻生知事も、仮処分申請にたいして「理事会、組合長会議、総会などで方針が揺れている。どこで意思決定がなされているのか」と疑問を呈したり、国会で継続審議中の有明海再生のための特別措置法について「政治的な調整をする環境は厳しくなっている」と漁連の動きを批判しています。
 さらに、農水省に対して中長期の水門開放調査を求める考えのないことを表明しています。いったいどちらを向いて県政をやっているのか、首を傾げます。県民のために堂々と論陣をはって政府に対してき然とした態度をとるのが、県知事の姿勢ではないでしょうか。


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