20020805

保育行政後退させる市政
保育園の待機率はワースト・ワン
学童ホールがなくなる?

川崎市 岡田 智美


 「学童ホールが閉鎖されるかもしれないから、反対署名をお願い」と、友人に呼びかけられました。「えっ、どうしてなくなるの?」突然のことに驚いてしまいました。
 今は子供が大きくなったので、学童保育との直接のかかわりはなくなっていますが、子供が小学校3年生までお世話になった学童には、今でも大きな親しみ感じています。
 公設民営で運営されていた私たちの学童ホールは、自分たちが参加して運営していたという自負もあり、学童での3年間の思い出は親にとっても忘れられない、楽しいものでした。その財産として、父母たちの交流は今も続いています。

*  *  *

 川崎市の阿部市政は、政令市ではじめて公立保育園の民営化と、学童保育の来年度からの廃止を打ち出しました。川崎市は行政改革、財政効率化のために、子育て中の労働者の家族にとって必要不可欠な保育園と学童を、切り捨てようとしているのです。
 川崎市の学童保育事業は40年の歴史をもち、現在115カ所、4000人を超える子供たちが利用しています。ところが川崎市は、全小学校で、すべての子供を対象にした遊び場事業「わくわくプラザ」をつくり、学童保育事業の経費削減を行おうというのです。
 しかし、学童ホールは両親が仕事をしている家庭の子供たちが、毎日の生活の場として利用するところです。好きなときだけ利用する、遊び場事業とはまったく役割が違うのです。
 また、川崎市は地域にある「こども文化センター」を市職員による専任の体制を廃止して、民間委託しようとしています。しかも児童福祉事業にまったく実績のない団体に委託しようとしているのです。子供文化センターは、子供たちが自由に安心して遊んだり、グループ活動を経験する場として、地域に定着しています。
 また、公立保育園の民営化も許せません。川崎市の保育所の基準は、国の基準よりも高く設定されています。民間保育園も市のレベルにあわせて高まっているという効果もあげてきています。しかし、保育園の数はまだまだ不足しており、保育園に入りたくても入れない待機児童は2500人を超えており、待機率は政令指定都市の中でワースト・ワンとなっています。
 市の保育基本計画では、運営費の抑制、人件費削減のために、いまある公立保育園を民営化して営利企業を参入させたうえに、待機児解消を5年先に延ばすというのです。営利事業の行き着く先は、競争とコストダウンです。保育の質の低下が心配されます。

*  *  *

 阿部市政の動きは、保育行政の大きな後退といわざるをえません。不況が続く中で、親たちの働く環境は急速に悪化しています。不規則な勤務を強いられる人も増えています。親が失業したことで保育園を辞めなければならなくなる子供もいます。
 親たちの生活苦などによる不安定な心情は、子供たちに敏感に伝わります。親のストレスが子供たちに向かい、虐待や暴力になるケースもあります。川崎市は「子供の権利に関する条例」を制定したはずです。
 今、行政に問われているのは、不況、高失業の時代に対応する保育政策の充実ではないでしょうか。