20020725

執行部も、私も驚いた!
労組の重圧の中での反乱
若い委員たちが「反対」表明

機械工場労働者 山路 幹男


 どきどきしてしまった。会社提案の1日15分の勤務時間の延長に対して、組合支部の委員会で「賛成」に手を上げる者がパラパラだった。
 20歳代から30歳代前半の若い職場委員が上司の圧力や支部執行部の説得を振り切って、「反対」に手を上げたのだ。結果はギリギリで会社提案が承認されたが、このような事態はここ20年来なかったことであった。
 執行部も驚いたが、私も驚いた。一瞬迷ったが、私も反対に回った。言いたい放題言った手前、彼らだけに後の責任を取らせることはできない。私の発言が彼らに微妙な影響を与えたかもしれない、と思ったからだ。
 実は私は、採決の直前まで、来年3月末までの時限措置でもあり、やむを得ないとほとんどの委員が賛成に回るのではないかと思っていた。そして、私もそうしようと思っていた。しかし、それはとんでもない認識不足だったと知ることになった。
 私の言い分も聞いてもらいたい。
 1つは会社の業績がここ3〜4年で大きく落ち込み、赤字決算、無配になっていること。大競争時代を迎え、低コスト競争に勝ち残っていけなくなっているのだ。金利の低下によって従業員の年金基金や退職金の運用ができなくなってしまった。国内外の大企業との競争に敗れ、なんとか下請けの仕事をもらって食いつないでいる状態だ。
 ある事業で大手2社と合併を決めたが、正式に新会社が発足する直前に、あなたのところの従業員は余剰が多いと、3分の1ほど新会社への移行を拒否されてしまった。
 2つ目に組合の対応だ。
 これだけ労働条件が下がっても、賃金が上がらなくても、また人員削減で同僚が職場を去ることになっても、会社との協議だけでことを済ませてしまうのだ。ここ数年で6000人ほどの組合員が減少しているのにだ。
 組合活動に期待をなくした組合員は職場集会にさえ出てこなくなり、組合の末端役員を入社10年もたつかどうかの若い者に押しつけ、知らんぷりである。
 支部の委員会に出席できる職場委員は、皆、上司の推薦、指名があってはじめて当選できる。いや、もちろんその対抗馬として立候補することも可能ではある。しかし、今ではそんな気骨をもって対立候補に出る者は、1000人いる中で1人か2人というありさまなのだ。もちろん、圧倒的大差をつけられて落選してしまうのだが。
 ストライキも経験したこともない若い職場委員に、この大競争時代に職場を守っていくために労使協調で、組合が経営をチェックしていくのだと教育している。
 しかし、実態はどうだろうか。2年間で50回ほど開かれる委員会で一言も発言しなくて任期を終える職場委員が大半なのだ。
 職場集会さえ開いていない職場もすいぶんあるのだから、それもそうだと思ってしまう。こんな会社の業績が伸びるわけがない。
 しかし、今やっている仕事が職場ごと、あるいは工場ごとなくなってしまうことがよくある。これはもう若い者も年配者も一大事である。いったん失業すれば、収入は3分の1から2分の1くらいにならざるを得ない。
 しかも正社員として採用されることはほとんど不可能となる。黙って経営者の言うことを聞いていれば、職場が守られるということは完全になくなった。今回の委員会において、少しでもそのように感じた人がいたなら、それは大きな意味をもつかもしれない。
 異質なものを排除するのではなく、それを包みこんでひと回り大きくしていこうという度量のある経営をやってもらいたいものだ。
 会社と御用組合の重圧の中で、「反乱」が始まりつつあるように思えた。