20020725

都の風便り
「職安エトセトラ…?」

京都 近江 八郎


 私は、ほとんどいうかずっと自営でしたので職安とは関係ないと、これまで思っていました。しかし1昨年「IT技術講習・能力再開発という仰々しい旧労働省の失業者の給付対策」というものをある友人から教えてもらい、「自営業者でも中高年を対象に技術講義を受けられ、おまけに給与ももらえる」ということで5カ月間CAD講習を受けた(これは現在財源が底をつき受給はなくただ講習を無料で受けられるだけ。しかも期間3カ月以内と短くなっている)。
 それ以来2年ぶりのこの6月に職安へ、今回は職を求めて通いだした。その理由は少しでも日銭が稼げたらという程度のものだが、それゆえ午前中のみとか深夜、あるいは夜勤という条件となる。日中は本来の自営の仕事を、再度旗揚げしたいからだ。
 はじめは職安でのシステムがどうしていいかも分からなかったが、「求職受付票」を作成してもらい、パソコンで求人を見る。はじめは職安の職員も「ご苦労さんです」とか言って愛想よかったが、最近は顔馴染み? になってか、職員は無言でパソコン受付票を渡すようになった。
 時にはパソコンが混んでいて、待ち順の銀行窓口の票と同じものを取り出し、待つこともしばしば。パソコンの前で小1時間ほど調べ、これはと思うところをプリントアウトするが1人5枚まで。しかしこれも要領を覚え、いくらでもプリントアウトできるスキル?も身につける。
 パートという項目で探していると、たとえば夜の旅館の泊まり込み、あるいはビルやマンション、スーパーなどの管理人、清掃業がこの年齢(50歳代)になる。パートとなるとこんなものだ。よくあるのが「ビル管理とメンテナンス」という業種である。
 あるアジア系の留学生に日本語を教える求人があったが、担当者に「日本語教授」の資格を持っていないと難しいといわれた。内容覧には「資格あるのが望ましい」とあったので問い合わせてくれと言ったら、案の定そうであった。
 その担当者いわく「この年齢で短時間かパートならボイラーマンか清掃しかありませんが、何か資格をお持ちですか?」と釘をさされた。「資格は何もありませんが、特技はタダ飯、タダ飲みですが……、住まいは出町橋(鴨川)の下ですが!」と言ってやったらプイと向こうを向いた。
 そしていつも思うのだが、これだけ失業者があふれている現状を見て安定した給与をもらっている彼、彼女は何を思っているか、またどんな気持ちで失業者に対応しているか聞きたいものだ。
 まあ、清掃ひとつとっても募集1人でなんと20〜30人が応募すると。それも午前か夜の2〜3時間で時給750円前後でもこのありさまだ。
 泊まり込みの夜警(仮眠無し)や深夜の旅館でのフロント受付でも時間給750円前後である。時間給千円などもう夢の夢である。この旅館には募集人員2人で応募が30人あったが、その中からは採用せずまた新たに募集をしていると……追加募集ではなく旅館にとってより都合のいい人間を取りたい思惑だけでまったくの買い手市場である。
 また清掃などもトイレ清掃があるので基本的に女の人を望まれるし(男女雇用均等法か何かで「男」や「女」のみと記載できないので実際は女の人の募集が実態である。夜勤や清掃でも、結局は年金生活者やわずかの給与でも生活できる人を求められ(主婦などのパート)、私のような年齢、また他に仕事をしようとするといつ辞められるか分からないので断られる。もう3件ほど面接に行ったがこの状態、また改めて職安から紹介があっても、もう職安以外の応募で人が決まったいうところも2件ほどあり面接以前の問題であった。
 まあ、こんな状態が今の日本の現状の一端である。私もなんとなく「閉塞感」を覚えた、ここしばらくの「職安通いである」。
 先日、近畿の求人倍率がたしか0.3人であると聞いたが……現実はそれ以上であろう。雇用者側の好き放題であるように思える。これは日本の根幹から雇用形態を崩し……実際大手企業もリストラ、リストラでありエリート? から清掃などを求めているわれわれレベルまで日本はおかしくなって、「痛み」どころか、人生、社会崩壊へ向かっているように思えた。
 これが職安の窓からから見た風景だ。
 「年齢不問」「時間1日3時間程度」……希望にぴったりだと思い次に「資格」覧を見ると……「助産婦資格有」であった。……たまりまへんわ……こんな世の中……助けてくれ……小泉君?
 草場の陰の両親は学校まで進めたのに……と泣いているだろうか……。しかしこの閉塞(へいそく)感つのる日本を知らず亡くなったのはある意味ではよかったのだろうか? と思わずにいられないこの日本の現実だ。