20020725


とうちゃんば返せ!

高椋 龍生


真黒く ただれたしかばね
虚空をつかみ上がろうとする
その手は
いつか いつか きっと
しあわせをつかむ日のための
差別にすりきれた手だった

こげんか姿になって おどんたちぁ
あしたから どげんすっとよかつか
うちのとうちゃんば返せ
なかまば返せ
ぜにはいらん 一人息子ば はよ返せ

果しなき悲しみの底から
ほとばしり出てくる ひとかたまりずつの
怒りの灯が ぐんぐんとおしひろがり
とめどなき炎となって
地底から
地底から
つきあげてくる

この悲しみを
この苦しみを
じっとかみしめ なかまたち
たちあがろう たちあがろう
       たちあがろう

(1960年代の三池闘争の中でうまれた、詩集「石蕗(つわ)の花が咲きました」より)