20020625

半年間のつらい出向生活
家族と別れて心もすさむ
早く帰りたいなぁ

日産自動車労働者 森山 幸雄


 5月から、他工場への応援で、半年間の出向中だ。一昨年も半年間の出向があった。家族持ちも独身者も、みな独身寮に寝泊りして、つらい仕事を強いられる。
 九州、栃木などからも応援に来ている。閉鎖された村山工場からも、家族を残して単身赴任している人もいる。座間、村山、栃木、追浜と一巡りしてきた人もいる。
 最初の1カ月くらいは大変だ。車種が違うから、カン、コツ、手順など慣れないからである。ラインが止まったりすれば、出向先のやつから怒鳴られる。
 組合も労資協調だから、労働者が「団結」したり、助け合うという考え方がない。職場によって違うのかもしれないが……。
 派遣労働者と他工場からの応援者で組の半分以上を占めるが、俺が応援に行ってから、派遣労働者はもう3人辞めた。1日で辞めるやつがほとんど。見ただけで、いやな仕事だと思うんだろうな。やってられない。  有給休暇は40日もあるけど、実際は使えないのが残念だ。フランスに旅行したとき、フランス人が、バカンスが5〜6週間、残業はほとんどなし、メーデーも祭日だし、ほかの祭日も多い。日本の過労死など考えられないと言っていた。ストライキも通告なしでやってしまう。それだけ権利と既得権を守るためにフランスでもイタリアでもスペインでも、労働者はよくがんばっていると思う。
 ゴーンは、そんなことはよく知っているのだろうし、うちの組合もルノーの組合との交流があるから知っているのに、黙っているのだろうな。バカヤロウ!
 日本でも労働者が5000万も6000万人もいるのに、なんでメーデーが祭日にならないのかなあ。
 トヨタは、中国での現地生産に、これまで慎重だった中国製鋼板を調達するという。ホンダも日産も中国での生産を大幅に増やす。ますます日本の産業空洞化が進んでいく。労働者の雇用と国民の生活はどうなるんだい。そのうち中国へ出向ということにもなりかねない。
 トヨタの奥田会長は「日本経済の高成長は当面望めない」「企業にとっての主な成長の舞台は海外になる」「国内事業は短期的にはコスト削減で競争力低下をくい止め、次世代のイノベーション(技術革新)で長期の成長を期す」といっている。
 今年の春闘で、各社の労務担当者が集まった3月の日経連会合で、奥田はベアを多少積む意向を示したトヨタの幹部を「君、それはトヨタ首脳陣の共通認識なのか」と怒鳴り付けた、と新聞に出ていた。
 別の新聞には、2001年度の過労死の認定件数が前年度比68%増の143件と過去最高に上ったという記事が出ていた。
 出向は10月まで、毎日毎日、独身寮と工場の往復だ。家族からの贈り物や子供からの手紙に顔をほころばせる人の顔をみると、家族のきずなは大切だと思う。家族と別れて心もすさみ、ギャンブル、酒、女に金を使い、生活が荒れる人もたまにはいる。
 会社と組合が主催してバーベキュー大会があったが、参加者は少なかった。みんなそんなところには行きたくないのだ。  早く帰りたいなあ。