20020605

破たん、買収のラッシュ
寿屋では1万3000人解雇

福岡・荒井 孝哉


 不況などを背景に、最近の相次ぐ大手スーパーの経営破たんなどで、私たちの地域の流通業界地図はまたたくまに大きく変容しています。
 昨年のマイカルの破たんに続いて、ダイエーの経営再建にからむ大リストラ、さらに九州では地場最大手だった寿屋の経営破たんと解体、4月にはニコニコドーの民事再生法申請などたて続けです。
 昨年高校を卒業した息子の仲良しだった同級生も、寿屋に就職して元気に働いていましたが、1年も勤めないうちに倒産してしまいました。いまでも働いていた店舗は休業中で、営業再開のめどはたっていないといいます。年末には、おそらくノルマを課せられてだと思いますが、わが息子にお歳暮まで贈ってくれて、涙ぐましい努力をしていたのに、慰めようもありません。寿屋ではパートも含む1万3000人が全員解雇されました。
 もうかりそうな店舗は、イオングループ(ジャスコ)や若干の地元のスーパーが買い取って営業が再開され始めていますが、不採算店は閉店されたままです。寿屋を解雇になって、ニコニコドーで働いていたら、また倒産、「もういいかげんにしてくれ」というパートの人の話が新聞に載っていました。
 マイカルの再建をめぐってもイオングループが乗り出してきており、マイカルの本体と地元の子会社であるマイカル九州とのあいだで対立しています。西日本の中堅スーパーであるイズミもことあるごとに店舗買収に手を上げており、まるでハイエナが餌を争うようです。
 百貨店でも、そごうの倒産で、北九州(小倉、黒崎)の百貨店地図を塗り替えました。今年に入って、福岡の老舗で天神の顔ともいうべき岩田屋が自力再建を断念し伊勢丹の傘下に入ることになりました。これによって熊本や日田の岩田屋は閉店、全員解雇となりました。岩田屋は昨年、系列のスーパー・サニーを西友に売却していますが、その西友も米・ウォルマートに買収されるなど、変転きわまりません。
 大店法の廃止による嵐のような出店ラッシュで、旧来の商店街は見る影もなくなりましたが、その次に大型店同士の激しい競争とつぶしあいが繰り広げられて、とうとう中央の大手資本においしいところだけ買収・隷属させられるところまできました。大型店舗を核とした再開発事業なども各地で中断させられたり、行き詰まったりしています。
 町はつぶされたあげくに、労働者の首は切られ、地域経済にも大きな影響が出ています。シェア争いはこれからもっと激しくなるでしょうが、そのたびに労働者も消費者も振り回されるのです。規制緩和がもたらすのは、地域の荒廃だけです。