20020425

「支援法」は強制収容が狙い
悪政がホームレス生み出す

釜ヶ崎地域合同労働組合 委員長 稲垣 浩


 ここ釜ヶ崎では、大阪市が日雇い労働者に対して一貫してとっていた差別行政を、国が法律をつくって推し進めようとしています。当初は、釜ヶ崎のNPOと民主党の1部の議員と自民党のこれもごく1部の議員が、この法案づくりを画策し、議員立法で成立させようとしました。去年の11月のころの話です。
 これに「待った」をかけたのが公明党でした。「おっ、公明党やるやん」と思いました。が、……。
 私たちが釜ケ崎の大衆運動の拠点としている釜ケ崎解放会館に、抗議のタレ幕を下ろしたのが11月21日でした。「差別・分断のホームレス支援法糾弾」と。
 民主党案、自民党大阪案・東京案、その後出てきた公明党案のどれにも共通しているのは、「収容と排除」の思想が貫かれているということです。他にもいろいろ書かれていますが、現行法の活用ですべて対応できることです。
 ですからこの「ホームレス自立支援法案」の目的は、ズバリ「収容と排除」なのです。政府は、公園や河川敷、路上でテントを張って生活する人びとを、自らの悪政の反省と人権擁護の観点から対応するのではなく、治安の問題としてとらえ対応しています。
 小泉内閣は痛みを日雇い労働者に押しつけ、やむなく公園でテントを張って生活している人びとを、なおも追撃しようとしているのです。恐ろしい内閣です。そしてマスコミは、こぞってこの悪法を通すようキャンペーンを続けています。テント生活よりはプレハブの施設のほうが「マシ」ではないかと。何か大切なことが抜けているのではないでしょうか。
 釜ヶ崎の三角公園横にある、あいりん臨時夜間一時避難所は、釜ヶ崎のNPOが大阪市と一体となって管理運営しています。二段ベッドの下段は、あぐらをかいて座っても頭が上のベッドにつかえます。冬になってもストーブもありません。
 寝具はマットに3枚の毛布。驚くことにまくらはありません。ですから毛布3枚のうちの1枚をまくらがわりにしているのです。「シラミが寝具についている」と寝泊まりした人びとは言います。夕方に配られる乾パンは硬くて、これで歯を折った人もいると聞いています。
 監視され、管理されるのはだれでもいやでしょう。人間としての尊厳を傷つけ、人権もない施設をつくって、日雇い労働者やテント生活者をそこに押し込めようとする法律は、まさに治安の維持を目的とした保安処分にほかなりません。
 ちなみに、アパートで生活保護法に基づく保護を受けた場合、1人にかかる1カ月の保護費は12万円ほどです。では、施設収容で1人1カ月にかかる費用はいくらかといいますと、22万円なのです。生活保護費以上のお金をかけながら、生活保護以下の条件で労働者を収容する。そのお金の多くは何に使われているのかというと、施設を管理する人の人件費です。プレハブという器の中身が問題なのです。
 自由とは「自らを由(よし)とする」のではないでしょうか。テント生活はいろいろ厳しいですが、だれの世話にもならず生活しているという自負と自分のプライバシーがあり、空間があります。まず、それを守らないと。そこからすべてが始まるのです。