20020305

お先真っ暗な時代

理不尽な社会変えようよ

角倉 雪代


 老いた母が、急に弱ってきた。生きていく気力が失せ、何もかもいいかげんになってしまった。年の割にしっかりしていて、つい最近まで家事全般こなしていたのに、何もせずコタツで居眠りをしている時間が長くなった。89歳なのだから無理はないが、子供として胸迫るものがある。
 そんな母でも、米国のアフガニスタン攻撃やリストラで首になった人たちの報道に胸を痛め、「これから先世界はどうなるのかしら、あんたたち大丈夫」と同じことを何度も何度も聞いてくる。
 親としていつまでも子供たちの行く末が心配なのだろう。妹や私の年金は微々たるものだし、弟は不安定な職場で、これから先どうなるのか見通しがつかない。何とかして生きていくわよ、と答えるもののお先真っ暗な時代になってしまった。
 先日乗ったタクシーの運転手が、介護保険料についてこぼしていた。65歳になるが年金で食えないのでアルバイトで運転手をやっていると言う。何で私たちみたいな者から金を取るんでしょうかね、と。
 健康保険料も3割負担になるという。消費税率のアップも取りざたされている。企業の倒産も増えている。今日、職場の仲間が、以前働いていた会社が倒産したと話していた。
 最近、取引先のお店かが閉店したとか、倒産しそうだという話が頻繁に入ってくる。電話でしか話をしてない相手だが、これからどうするのだろうと心配になる。
 先日お酒を飲んで遅くなり、なかなか眠れないのでテレビのスイッチを入れNHKの深夜放送を見た。その番組は再放送で、途中から見たのでタイトルは分からないが、米国の民間刑務所産業が大きく発展しているという報道番組だった。
 州の施設がどんどん民間に委託されており、服役者たちの人権はまったくどこからもチェックされず、悲惨な状況にあることを映し出していた。何千人も収容できる大きな刑務所を過疎地に建て、服役者を使って安いコストで物をつくらせ、社会復帰のための教育に役立っているとか、40〜50人の地元の人を採用することで過疎地の経済に貢献しているとか得々と話す企業の職員。この番組を制作したオーストラリア(?)のレポーターが、かつては黒人を奴隷として働かせた、今は服役者を奴隷として働かせていると言って締めくくっていたのが印象的であった。まさに「自由の国」米国だ。
 また、2月25日付日経新聞夕刊の「明日への話題」で取り上げていた記事「エンロン社の破たん」は、こんなことを伝えている。
 「同社のトップは、1昨年ストックオプションを行使して約150億円相当の個人の利益を手にした。業績の悪化を見て、株を売り逃げた幹部もいる。これに反して、従業員が主に自社株で積み立てていた401k企業年金は、会社が売却を認めていなかったために無価値となった」と。市場経済と競争の名のもとに何でもありの米国の実態だ。
 これがまさに小泉たちが目指す改革の実態なのだ。みんな一生懸命働いてきたのに、労働者が汗水ながして働いた富が米国に吸い取られ、日本経済が悪化しているのはだれの責任だ。
 だまされてはいけない。いま流行のグローバル資本主義、市場原理主義、株式資本主義の道には未来がないと声を大にして言いたい。こんな理不尽な社会を変えていきましょうよ、皆さん。