20020225

生活保護世帯が急増

企業城下町も失業が深刻

長崎・橋田 富治


 リストラが大手を振ってまかり通っている。毎日毎日、新聞の経済面には、人員削減、会社解散、倒産などの記事が踊っている。かくして、12月の完全失業率は5.6%で337万人。そのうち、総務庁のお役所表現による「非自発的離職者」は125万人で、一昨年の12月より31万人増えたという。非自発的離職者、つまり首を切られ職場を失った人である。しかも今後ますます増える見通し。
 リストラとは、リストラクチャリングの略で、本来は再編成とか再構築の意味のはずが、今日の日本では首切りと同意義となってしまった。「500人の首切りを発表」と言うより「500人をリストラ」と横文字で表現した方が今風なのかもしれないが、首切りは首切りで、どう表現しようがいささかも事実に変わりはない。職を失い、家族を抱え、不安がどっと押し寄せてくる。ハローワークで調べたが、私の住む地域では、40代後半から50代の求職は、ほとんど皆無である。職を失い、さてどうするか…。
 失業保険の支給がある期間は、かろうじて乗り切れるとして、給付期間が終われば、たちどころに収入はない。小泉は「改革は痛みをともなう」などと公言し、民主党の鳩山なども「ミスマッチを防ぐセーフティネット構築」などとしたりげにいうが、首を切られ、職はなく、収入の道が閉ざされて……、冗談ではない。
 生活保護世帯が、私の地域でも急速に増えている。「生活保護率」という数字がある。月平均の被保護人員÷月平均人口×1000=生活保護率ということで、人口1000人当たり何人が生活保護を受けているかの数値だ。
 役所は、ああだこうだと言って、直近の月々のデータを教えてくれないが、 10カ月以前のは分かる。それを見て、自分が世間を知らないことをいやという知らされた。
 三菱重工といえば世界的に有名な大会社、その大工場が町の中心に居座り、文字通り三菱重工の城下町となっている香焼町だが、そこの生活保護率は実に54.9、県下のトップである。町の100人に5人以上は生活保護を受けているという実態である。ロケットさえ生産しているこの企業の足下が、こうした実状なのである。
 知人のソーシャル・ワーカーのところにも、最近、生活保護を受けたいのだが、という相談が相ついでいる。いろいろ事情をお聞きし、どうすればよいか、対応を相談し、行政の窓口につなぐのだが、困窮している方それぞれの経過と事情を聞くにつれ、困惑、怒り、嘆きのようなものに身をつまされる。相談を受けている側なのだけれど、疲れて途方に暮れるような気分に落ち込むことがしばしばだという。

保護手帳を担保にとる悪徳金融
 そんな中で、最近受けた相談で、弱肉強食というか、悪党というか、実在するベニスの商人のこと。身体に障害があって、なかなか長続きできる職がなく、生活に困り、消費者金融から借金していたが見る間に膨らみ……、自己破産。そして相談に乗り、八方に手を尽くしてなんとか保護を受けられるようになったケースがあった。
 ところで、その人の親族で同じようなケースなのだが、保護手帳は手元にないという。どこにあるのかただしたところ、それは日掛け金融業者の事務所に担保として取られているとのこと。保護を受けている人びとをターゲットにして、言葉巧みに金を貸し、その弱みにつけ込んで稼ぐ。日掛けだから法外な金利、しかも手帳を担保にとっているので、貸し金の取りはぐれはまったくない。心臓の肉を切り取ろうという連中がしっかりと蠢(うごめ)いているのだ。社会の構造のようなものとして、こういう連中が存在する。 失業が、社会のさまざまな出来事の引き金となっている。時代が、煮詰まるところまで来つつあるのではないか、そう思っている。