20020125

リストラでベテラン去る

残った者には過酷労働

印刷労働者 篠塚 勝一


 俺は最近、45歳になった。2年前に解雇され、はじめから労働条件の悪さを条件に、新しい印刷の仕事についた。
 「家族のために」というのが男の悲しさかもしれないが、こんなにひどいとは思わなかった。しかし、こんなことは中小企業、いや大企業でも今はざらにある、「よくある話」なのかもしれない。
 昨年の年末は、3週間休みなしの連続勤務を強いられた。しかも夜の9時近くまで残業しても食事も出ない。遅く家に帰ると、「会社は食事も出さないの。ひどい会社、それくらい要求すれば」と妻から責められる。
 「中小企業はこれは常識だ。親族会社だし、会社はいつでも人は雇えると強気だし…」と言い返すが、説得力がないと自分でも思う。最近は持病の神経性胃炎にまた悩まされている。
 職場では10数年働いていた先輩たちが、会社の融資銀行からの圧力でリストラされて、辞めていった。1人2人と去っていった結果、残った労働者の労働条件は過酷になっている。
 俺がガンの疑いで1カ月検査入院した時など、人がいなくて社長が俺の代わりをした。ガンの疑いが晴れて退院した時、社長が1番喜んだのかもしれない。
 年末のくそ忙しい時に、社長が小泉改革のまねをして「職場改革」をやると言い出した。たとえば、年賀はがき印刷の注文取りを、営業だけでなく俺たち技術者までやらされることになった。俺にはそんなヒマはないから、結局、文句を言いながらも妻がやってくれた。
 さて、こんなに働いているのだから、さぞ給料はいいと思うだろう。しかし、入社時に「うちは低賃金ですが、それでもいいんですね」ということで雇われた経緯もあり、その言葉通りびっくりするほど安い。そうとうに残業、日曜出勤している時で手取りで23万円ぐらい。通常では20万円そこそこ。一時金はなく、寸志程度が夏、冬あるくらいだ。
 こんな仕事を続けて、体を壊すことが心配だ。近いうちに健康保険も3割負担になるし、労働者には踏んだりけったりの状況が進んでいる。これが小泉改革なのか。
 しかし、俺にはまだ仕事がある。帰ると温かい家とかわいい子供がいる。これから寒くなるというのに、失業が原因でホームレスになる人が急増しているという話を聞くと胸が痛む。俺も人ごとではないからだ。
 俺によく似た子供の寝顔を見ていると、子供の未来を明るくするのも暗くするのも大人の責任かなーと思いながら、今日もまた眠りにつく。