20020125

私の職場は老人ホーム

胸張れる施設に変えたい

人手不足で走り回る現場… 仲間と話し合い、パワー全開

介護職員 中島 かおり(23歳)


 私は昨年の4月から、老人ホームで働いている23歳の介護職員です。私が働いている老人ホームは、特別養護老人ホームといって、主に65歳以上で常時介護が必要な人が生活しています。入所者はショートステイ利用者も含め、100人います。
 直接利用者の介護をするケアワーカー(私の職場では寮母・寮父という呼び方が一般的)は32人。勤務は2交代で、日勤と夜勤があります。日勤の就業時間は7時50分〜17時40分、夜勤(ケアワーカー4人対応)は16時から翌朝の9時です(仮眠時間は1人3時間。その間は1人で50人の命を預かっている)。日勤ではケアワーカー1人に対し、利用者約8〜9人をみなければならない状況にあります。
 このような施設で働き始めて感じたこと、疑問に思ったことは数知れず。まず、1番最初に「何か違う」と思ったのは、現場の雰囲気です。「それはないやろ」と突っ込みを入れたくなる場面が多々ありました。
 現場はすごくバタバタしていて、1つ間違えば、利用者に激突するのではないか、と思われる速さでケアワーカーが廊下を走っているのです。ふろ介助では、私たちでも日ごろの疲れを癒すために、ゆっくりと湯船につかって、体があたたまってから出たいのに、現場では、カラスの行水じゃないけれども、湯船につかったかと思えばすぐ出て、次の人を入れているんです。本当はゆっくり入ってもらいたいけれども、人手が少なく、ゆっくりしていたのでは次の仕事ができないというわけです。
 排せつ介助でも、排せつを理解していない利用者に対し、力ずくで便器に座らせたり、プライベートカーテンを閉めずに排せつ介助をしたり。また、しばらく便器に座ってもらったら排せつがある人に対しても、次の人が待っているから、という気持ちがどこかにあり、中途半端なトイレ誘導になっています。
 食事も1つのお皿の中身がなくなるとすぐに片付けたりして、精神的に利用者をケアワーカーが急がせている場面が多く見られます。
 ゆっくりと利用者のペースに合わせて介護したり、利用者とコミュニケーションをとることがとても大事なことなのに、それをしていると、仕事をしていないように思われる雰囲気が少なからず存在するのです。ですから、事故もたまに起きます。
 また、シャツが服の下から出ててもだれも気づかず、その利用者はシャツを出したまま1日中生活していたり、口にソースがついたままだれも気づかず半日過ごしていたり……。
 私の職場には、人手不足と、利用者に対して人としての意識をもった介護者が少ないという問題点があるような気がします。人として、というのは、痴ほうの人が多く、見える、見えないにかかわらず差別が存在しているからです。
 しかし、そのような現実に疑問をもっていた人は多くいます。先日、若い女性ケアワーカーで問題を話し合いました。そしたらみんな私と思っていたことは同じでした。自分だけではどうしたらいいか分からない、1人じゃ不安だったそうです。周囲が同じことを考えていることが分かれば、すごく安心で、仕事をするパワーが出てきました。
 それ以来、少しずつではありますが、ケアワーカーが利用者とかかわるペースも相手に合わせたペースになり、現場が利用者中心に物事を考える雰囲気になりつつあります。まずは、自分自身が変わらなければならないんだな、と実感した出来事でした。
 疑問に思ったことは、疑問のまま残しておくのではなく自分で考え、自分にしかできない対応(介護)をしよう、してもいいんだ、と思いました。だって、自分の親に今までのような私の職場には入らせたくはないし、自分の親に胸を張って紹介できる、また自分も入りたいと思える施設をつくっていきたいです。私の職場の未来は明るい !?