20011115

アジアの街角から(10)

高度成長の光と影ー上海

海援隊21(海外展開企業等を支援するネットワーク組織隊)
代表幹事 牟田口 雄彦


 上海は、開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の余韻(よいん)が残っていた。私は、ブッシュ米国大統領と入れ違いに上海に入った。そこでの上海人の話題は、なぜか日本では放映されなかったが、各国首脳が興奮したという、二十分間にわたって打ち上げられた花火であった。その費用が何と二億円という。
 また、ブッシュ大統領や江沢民国家首席などの飲み干したスープは、三百羽の鳥を三日三晩グツグツと煮たものであり、各国首脳の評判は上々だったという。何か、日本のバブル期を思い出すような話題が多かった。それほど、今の上海は上昇気流の中にある。
 ここ十年、毎年一〇%以上の成長率である。特に浦東新区といわれる国家プロジェクトの開発が行われている黄浦江をはさんだ対岸の区域は、面積五百二十二・七五平方キロ、九九年末で百六十万人が住む。中国華東地区の経済拠点で、開発総面積は六十平方キロの予定。現在の都市化面積三十八平方キロを加えると、都市化面積は百平方キロに達する。十年前は何もなかったところである。それが今や、金融センターやハイテク工業団地、バイオ、通信、自動車など九つの開発区が出現している。
 その一つ、陸家嘴金融貿易区といわれる金融街では、八十棟の超高層ビルが建設中である。現在、日本の森ビルがクアラルンプールのツインタワーをしのぐ世界一の高さのビル「上海環球金融中心」(高さ四百六十メートル、九十五階建) を建築している。開発が完了すると百社の中資・外資金融機関、三千社にのぼる大企業がオフィスを構える。話題になったヤオハンも九五年の十二月に世界最大規模のデパートをオープンさせたところである(現在は、第一百貨店に経営委譲)。また、虹橋空港と浦東空港間、四十七キロを七分で結ぶリニアモーターカーも、ドイツのほとんど無償の供与(北京ー上海新幹線受注がその見返りとの見方も強い)で建設されている。
 上海の中心地に建つ「上海市都市計画展示館」には、上海の未来の姿を描くジオラマや3DによるCGがつくられているが、そのジオラマに寸分違わずに、町が形成されていくということは、所有権の強い日本の土地制度の中では考えられない。社会主義自由経済の良さということか。そして、その都市計画の中に世界各国の建築家の知恵と投資を集めたビルと会社をつくらせる中国の商売の上手さに驚嘆する。通りの名前も「オムロン通り」などと入札して販売する豪華さである。 
 APECの余韻の残る上海浦東地区を見ると、日本のたどってきた道を思い浮かべる。高度経済成長期、そしてパブル期とその反動は大きかった。成長の光と影である。高度経済成長期の反動は、特に公害問題であった。今、見上げるような高層ビル群を前にして、温暖化の問題や都市ゴミそして農業問題など、日中間の協力は、投資だけでなく、負の財産を出来るだけ背負わないような仕組みを共同して開発していくことが、最も大切なことのように思える。

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