20011025

弱小書店つぶしが進む

活字文化を守ろう

大阪・まるよし書店 江副 良治


 喜寿を迎えた私、今しばらく現役で働かせてください

 日本書店商業組合近畿ブロック会主催の出版物再販制度擁護大会に各界からの多大なるご支援をいただき、おかげさまで本年三月、再販制度を存続することが確定いたしました。当大会の実行委員長として、心より御礼申し上げます。
 現在は本部役員も引退し、地元堺支部の相談役や地元商店会の活性化担当理事として多忙な日々を過ごしています。
 失業率五%といわれる昨今、喜寿を迎える老人が現役で仕事をさせて下さい、というのはぜいたくかもしれませんが、戦前、戦中、戦後幾度となくドン底につき落とされ、そのつどゼロからの再出発を余儀なくされた人間として、ささやかであれ日々仕事ができることは、生きていく上で最高の喜びであり、生きがいでもあるのです。
 されどこの不況は出版業界においても、ご多分にもれず厳しさは増すばかりです。再販制度の存続は決定したとはいえ、公正取引委員会は制度の骨抜きを狙い、競争原理を押しつけてきます。新規参入書店は超大型化し、書籍雑誌の物流にも差別化が拡大し、弱小書店つぶしともとれるコンピュータによるパターン配本は大書店中心でシステム化され、小書店には新刊および客注品さえままならぬ切迫した状態まで追い込まれています。
 経営者も老齢化しています。後継をするほどの収入もむずかしく、自然消滅の書店が増加しています。このようなキビシイ世の中ですが、人生の大半をこの道で歩いてきた私としては、近隣の子供たちと半分遊びをいれた次世代の人間教育の一環でもお手伝いができればと、「読み聞かせ」や読書の相談や宅配やら、多忙な日々を送っています。
 IT(情報技術)の発達で、世の中はスピード化され便利になったでしょうが、人の心がついていきません。この荒れた時代に活字文化のもつ偉大なる力を実証している例があります。全国の学校で始まった「朝の十分間読書」です。荒れた学校で苦労されたある先生の発案で始まり、すばらしい結果が認められ、現在では七千校を突破する勢いで進行しています。
 このような環境で教育を受ける子供らが大人になったころは、もう少し良い世の中になっているでしょう。

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