20011015

テレビニュースの虚実

海野 ひろし


 テレビのニュースで気になっていることがある。報道姿勢も気になるが、最近、演出された映像が急に増えていることが気になってしかたがない。
 たとえば、事件を再現した映像が出てくる。事件を、あたかもその現場で撮影したかのように、役者を使って演出するのである。
 民放では、以前からよく使っていたが、このごろはNHKもよく使う。
 ニュースを流す放送局にすれば、再現映像やイメージ映像という断り書きをしているから問題はないということになるのだろう。もっと言えば、見る側にわかりやすくニュースを伝えるための努力ということになるのかもしれない。
 しかし、再現映像は局の側であらかじめ作られたイメージを見る側に押しつけることになりかねない。
 このようなイメージの押しつけは大事件だけに限ったことではない。
 ニュースで、季節の話題を取り上げる時、畑仕事などの場面が出てくることがある。朝のニュースで生中継するためには、朝の三時や四時頃から準備が始まるという。
 普段ならまだ寝ている時間でもテレビ中継に合わせて、仕事に取りかかることになる。ウソではない。しかし、ありのままの姿を伝えているのとも違う。ニュースを送る側がもっているイメージに合わせた演出が、そこにはある。
 もう少し続けよう。
 ニュースのなかでよく登場するインタビューでもイメージの押しつけを感じる。
 いつの頃からか、日本語以外で話す人へのインタビューでは、字幕ではなく日本人の役者の声が流れるようになった。
 年齢や職業など、それらしい声の人を選んでいるので、自然な日本語で話しているように思えてしまう。軽薄な感じの話し方などは、まったく分からない外国語での声を聞くより、役者の話す翻訳された日本語の方が、軽薄さの度合いが増してくるようにすら思えてくるから不思議なものである。
 最初に自分の中でつくられたイメージは、その後のいろいろな判断に大きな影響を与えてしまう。初対面で、いい印象をもった人と、逆の印象をもった人とでは、それから先のつきあい方がずいぶんと違ってくるのと同じである。
 さまざまなニュースがテレビや新聞を通じて飛び込んでくる。どれが、本当のことなのかを判断する力が求められている。衝撃的な文字や映像にばかり気を取られていると、本当のことを見失ってしまう。

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