20011015

法事の話題はテロと不況

荒れ果てる古里の山河

熊本・長沼 信哉


 不況が深刻になっていく中で、私の身のまわりでもリストラ、失業などの話が出てくるようになりました。
 先日、実家の法事で久しぶりに兄弟、親族が集いました。話題は米国のテロ事件でもちきりでした。坊さんの法話も、仏教とイスラム教、キリスト教の違いについてなど、普段とは違う話をしていました。もちろんいかに仏教がすばらしいかということですが。こういう坊主の話にも影響が出ているのかと、別の意味で感心しました。
 小さな田舎町ですが、町に二十年以上も前に進出してきた誘致企業(第一号だった)で電機関係の会社がついに工場閉鎖になるという話も出ました。百五十人くらいの工場ですが、親会社の都合で、東北地方に生産を統合するので、来年三月で工場を閉鎖するということでした。
 私の実家の近くにもその下請け(孫請け)会社があって、何十人も働いていましたが、それはもうつぶれたそうです。町内にはいくつかそういう会社があり、関連も含めれば影響は小さくないと話していました。
 そういえば、松下や東芝といった大手の電機メーカーがこの夏からあいついで大規模なリストラを進めていますが、系列や中小のメーカーはもっと深刻になっているようです。中堅メーカーや地場のメーカーもいっせいにリストラに走っています。希望退職という記事が地元新聞の地方経済面に毎日のように載っています。それも以前は希望退職の人員を早期達成というような記事でしたが、最近ある電子部品メーカーでは八百人近い希望退職の募集に対して、応じる人が半分くらいしかいないという記事がでていました。「あとは配転などで対応する」と会社は言っている、ということでした。
 ところが、そこに勤めていた知り合いが会社を辞めてしまいました。彼によれば「グループ内に配転といっても、東南アジアに三年間も行けということで、しかも帰ってきてもまたすぐ他に配転ということで、とてもそんなことはできないと思って、仕方なく辞めた」ということでした。
 これでは解雇と同じです。五十歳近くになって、すぐには再就職のあてもなく、これからいったいどうしたらいいのかと不安を語っていました。次から次にこうしたリストラが出ているので、地域の雇用もいちだんと冷え込んでいます。
 職業訓練校の教員をやっている弟は「訓練校も失業者がたくさん入ってきている。また最近は高卒で就職できない子も入ってきているが、結局、訓練校を出てもこのあたりでは就職先はないし、学校に通っている間、問題を先送りしているだけ」といい、「まあ、景気が悪い間は、自分の職場だけはしばらくは行革はないだろう」と苦笑していました。
 また、子供のころから兄弟のように育ったいとこが三十年以上も勤めた会社でリストラにあい、「明日から子会社に行くことになっている。一生懸命会社のために働いてきたのに、給料もガクッと減らされた。腹立たしい、情けない」というような話など、本当に不況が深刻になり、他人事ではないと感じました。
 「国敗れ山河あり」という詩がありましたが、今の日本は、米国の番犬になり下がり、古里の山河も荒れ果てて、帰るべきところもないという状態です。いったいどこまでいくのだろうと思います。

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