20011005

賃上げも一時金もゼロ
組合役員を一新して交渉

雇用は何としても守るぞ

電機工場労働者 榎木 俊二


 先日の新聞に、県内の今年の春闘の賃上げ率は史上最低だと出ていました。これを見て、私は複雑な気持ちになりました。同じ働く者として、賃上げが低いのは気の毒だなあと思う半面、それでもいくらかでも上がればいいよなあという思いです。
 というのも、私の会社では賃上げがなかったからです。それに、ボーナスも昨年の冬も今年の夏も出ませんでした。労働組合がねばり強く交渉して、やっと今年の夏に冬の分の一部が出ただけでした。私は結構長く労働組合の役員をしていますが、こんなことは初めてです。組合員は「母ちゃん(妻)からブーブー言われて困っちゃうよ」と嘆いています。
 私のいる会社は、ゲーム機とエアコン部品をつくっています。ゲーム機は、新技術の開発で一時は業界で独占的地位を占めていたこともありました。それが、コンピュータなどの技術進歩を受けて他の業者が入り込むようになり、競争も激しくなりました。時がたつにつれてむしろ私の会社の製品は時代遅れになり、業界で占めるシェアがだんだん落ち込んできたのです。
 会社が一時の繁栄にあぐらをかいてきたことが、今日のような状態を招きました。そこであわててエアコン部品に手を出したのですが、軌道にのる前にIT(情報技術)不況が電機産業を直撃。思ったほど仕事が来ず、最近ではだんだん先細りになっています。
 いつまで会社がもつのかというのが正直なところで、組合員は不安をつのらせています。「かといってこの不況でどこが雇ってくれるのか」「子供がまだ小さいけど、母ちゃんにパートで働いてもらっている」。こんな会話が職場で飛び交っています。
 労働組合もしっかりしなければと、今年の大会で役員を新しくして、会社とひんぱんに交渉をしています。会社は「厳しいけれど、何とか銀行が支えてくれているからだいじょうぶだ」という一点張りです。労働組合は、「それは甘すぎる。仕事を確保する努力はどうなんだ」と、こんなやりとりがくり返されています。
 同じ工業団地の会社で(そこには私の友人が組合の委員長をしており、ときどきは情報交換をしていましたが)、その会社は銀行が手を引いたために倒産しました。もちろん会社もそのことを知っています。
 労働組合としては、労働者の雇用は絶対守るという態度でがんばっています。会社も今のところはリストラはやっていませんが、雇用確保を理由にして賃金が引き下げられるのも許せません。本当に、生活は今がギリギリです。
 労働者の生活がかかっています。あきらめたら終わりですから、ねばり強くやっていきます。

ページの先頭へ