20010925

路上生活強いられる人びと
強制排除に抗議して裁判

日雇い労働者に仕事よこせ

釜ヶ崎地域合同労働組合委員長 稲垣 浩


 一九九八年十二月二十八日、大阪市は西成区にある市立今宮中学校北側歩道上に住んでいるホームレスの人たちを強制排除しました。排除された人たちは、損害賠償の裁判をおこし、先日結審し、今年十一月八日に大阪地裁にて判決となっております。
 さて長い不況で、ここ釜ヶ崎では多くの日雇い労働者の人たちが路上(公園など)での生活を余儀なくされています。また、釜ヶ崎周辺はおろか、大阪府下の公園や川すじの空間で、ブルーシートや廃材で住まいをつくり、アルミ缶やダンボールを集めてお金にし、生活をしている人たちの多くは釜ヶ崎の日雇い労働者の人たちです。
 ご存じでしょうか、釜ヶ崎の中にある通称「センター」の三階にある「あいりん公共職業安定所」は、できてから三十年以上たちますが、いまだに一件の就労紹介業務もしたことがないのです。「あいりん職安は仕事の紹介をしろ」と、これも三十年近く叫び続けていますが、行政はそれを無視し続けています。
 それでは何によって就労しているかというと、手配師や人夫出しの手をへなければ仕事につけません。これらの人たちは暴力団とつながり、その資金源となっていることは衆知の事実です。ピンハネ(中間搾取)をなくすためにも、公的機関の職安が介入しなければならないのに、責任を放棄しています。
 これは国の責任です。釜ヶ崎の労働者は全国の建設現場で働いています。あいりん職安は、不況で仕事がなく、つらい思いをしている人たちに仕事の紹介をしなければならないのではないでしょうか。
 また生活に困った日雇い労働者の相談窓口として、大阪市立更正相談所があります。ほとんどの人たちは窓口でハネられ、運よく受け入れられたとしても施設に収容されてしまうのです。居宅保護(アパートなどで生活保護を受けること)は、めったにないといってよいでしょう。監視され、管理される施設は、誰も望んではいないでしょう。
 ホームレスの人たちの問題は、釜ヶ崎の問題なのです。国や大阪府や大阪市が、釜ヶ崎の日雇い労働者を一人の人格のある人間として認めようとしない姿勢が、ホームレスを生むこととなっているのです。
 仕事もない、生活保護も受けられない。そしたら路上や公園で雨、風をしのぐ住まいをつくらざるを得ないでしょう。だれの世話にもならず、一人で生きてる人たちのテントや小屋やバラックをつぶすなと、行政に言いたい。
 今宮中学校の北側歩道上のホームレスの人たちを大阪市が強制排除したことに関して、大阪地方裁判所で証人として立った国際政治学者の武者小路公秀先生はこう述べています。国際人権規約について、すべての市民に適切な居住の権利が保障されている。「安全、平穏に尊厳をもって生活をする場所を持つ権利がある」と。「ここにいう適切な居住の中には、非公式の定住、つまり国内法上は不法に占拠していると見なされる場合も含まれる」と、そして「強制立ち退きをしてはいけない」と。

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