20010825

つぎつぎコンビニが開店

過酷な競争に苦しむ商店主

大阪 藤島 信也


 通勤に使うもよりの駅前に、一軒のパン屋さんがある。駅周辺には工場があり、以前は出勤前の労働者やOLがパンや弁当を求めて、結構にぎわっていた。店はご主人とその両親の三人で切り盛りしていた。
 「以前は」というのはわけがある。三年前、すぐ向かいにJR系列のコンビニエンスストアが開店したのだ。パン屋さんはしばらくは閉店時間を延長したりしてがんばっていたが、客足は減る一方。今ではご主人が一人で店を維持し、時々訪れる客に笑顔で応対している。ちなみにこのパン屋さんは、今でも消費税を取っていない。
 一方、この半年間で近所には大型駐車場を備えたコンビニが二店もオープンした。代わって、三店の駐車場を持たないコンビニが閉店した。昔は朝七時から夜十一時までの営業だったコンビニも、今では二十四時間営業が当たり前。また駅前など、よほど良い立地条件でなければ駐車場も必要だ。
 ここ数年間、商店数も販売額も急伸してきたコンビニ業界でも、淘汰(とうた)が始まっているようだ。
 近所の酒屋さんでの立ち話。「この店もコンビニにして、きれいに内装したらもっと客が増えるんじゃないの」という問いかけに、店主は「とんでもない。仲間内でコンビニに転換した店もあるが、どこも大変で、離婚した家庭を何軒も知っている」と激しく否定した。
 二十四時間営業をするには、従業員の確保が必要だ。うまく雇用し、給料を払うことができればよいが、そうでなければ身を削って店を維持しなければならない。大変な労働強化となり、家族で過ごす時間もなくなり、家庭不和が絶えないらしい。
 「消費者の利便のため」という美名の下に、商店主を過酷なまでの競争に追い立てる規制緩和や経済構造改革。この行き着く先は、生き残れる少数の大資本による業界支配以外の何物でもないだろう。

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