20010805

親たちに危機感、自ら動く
「つくる会」教科書採択を阻止

区民の世論と行動で勝利

東京・杉並区民 高野 あずさ


 「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書のことは、新聞やテレビで知っていたけれど、まさか、杉並で問題になるなんて…。これが、私たち区民の率直な気持ちでした。
杉並区がこの問題で注目されたのは、東京の大きな町だということもありましたが、山田宏区長が教育委員を入れ替えてまで、教科書採択に臨んだからです。
 昨年十一月、杉並区では突如三人の教育委員が交代させられ、後任には右翼的な人物がすえられました。教育委員が一度に三人も交代するというのは異例中の異例であり、この人事はあきらかに「つくる会」教科書採択に向けてのものでした。市民グループや教員組合は、採択阻止に向けて動き出しました。
 しかし、こうした動きは、運動に直接関係ない多くの区民にはまったく知られていないという状態でした。子供の学校のPTA役員やお母さん、お父さんたちと話しても、このことを知っている人はまったくいませんでした。教科書問題に関心のある人でも「まさか杉並区では採択しないでしょう」という反応(たしかに、あの教科書をほんとうに学校現場で使うなんて考えられませんが)。
 こうした状況のもとで、なによりも大事なことは、杉並にこういう問題があるのだということを区民に広く知ってもらうことです。区長と教育委員会は区民が知らないうちにやってしまおうとしているのですから。中には「山田さんが区長だから、そういう動きは抑えてくれるよ」という人もあり、「とんでもない! 区長が教育委員を入れ替えたんですよ」というと「そんな人とは思わなかった」と驚くといった具合。
 そこで、PTAで市民グループの人から話をきく会をもったり、来られなかった人には電話で伝えました。また、具体的にできることとして、教科書展示会へ行って、アンケートに反対意見を記入してくることを呼びかけました。この問題に関心をもつ他校の人とも連絡をとりあって、展示会に行こうと声をかけました。私たちだけでなく、危機感をもった親たちが、あちこちで、自発的にこんな活動をしていたと思います。
いよいよ採択を前にして、七月二十四日には市民グループが呼びかけて区役所で「人間の鎖」行動が行われました。炎天下、五百五十人もの人が集まり、区役所を包囲して反対の意思表示をしました。また、教育委員会の傍聴にも多くの区民がつめかけました。その結果、教育委員会は「つくる会」の教科書を不採択としました。杉並区民の行動と世論が採択を阻止したのです。
 こうして教科書問題はひとまず区民の勝利に終わったのですが、それで安心というわけにはいきません。一昨年就任した山田区長は、学校給食の民間委託化を強行、学校選択の自由化も強引に進めようとしています。
 小泉首相と同じ「民間でできることは民間に」の考え方で、公立学校にかける予算は減らし、それに不満な人は「自助努力」「自己責任」で子供に教育を施せばよい、という方向につき進んでいます。
 教科書問題はたまたまの思いつきではなく、「教育改革」を、国にさきがけてやろうとしているのが山田区政なのです。この区政が続く限り、杉並区民の暑い夏はまだまだ終わりそうにありません。

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